2025.10.15 18:00

文● 初野 正和 編集●ASCII STARTUP

提供: 岐阜県起業家精神育成プロジェクト事業/岐阜県

『INNOVATOR’S VILLAGE』で行われた様子。岐阜会場では32名の中学生・高校生が参加した

実践的なプログラムを通して社会で生き抜く力を養う

 地域産業の担い手の育成と経済をけん引する新しい産業やイノベーションを創出するために、アントレプレナーシップ教育の普及に力を入れている岐阜県。2025年8月31日に『恵那文化センター』(岐阜県恵那市)で、2025年9月14日に『INNOVATOR’S VILLAGE』(岐阜県岐阜市)で、岐阜県在住または在学の中学生・高校生を対象にしたイベント「岐阜アントレプレナーシッププログラム(Gifu EP)」が開催された。

 昨年、一昨年に続いて3年目となるこのイベント。今年度は2日間で合計54名の中学生・高校生が参加し、岐阜県内に少しずつアントレプレナーシップの精神が根付いていることが実感できた。

 アントレプレナーシップ教育を簡潔に説明すると、文部科学省のウェブサイトには「アントレプレナーシップとは、様々な困難や変化に対し、与えられた環境のみならず自ら枠を超えて行動を起こし、新たな価値を生み出していく精神」とある。「アントレプレナーシップ=起業」のイメージが強いかもしれないが、起業家を育成するためだけではなく、「社会に出たときに必要とされる能力を身に付ける」のが本教育の目的となっている。(https://entrepreneurship-education.mext.go.jp/)

 今回のイベントでは、昨年に続いて実践的なプログラムを用意。5〜6名のグループに分かれて、各グループを岐阜県で活躍する起業家などのメンターがサポート。各グループは「会社設立」に始まり、「市場調査」「計画」「資金集め」、そして「仕入れ」「製造」「広告」を経て、「販売」「計算」「振り返り」と経験していく。

グループに分かれて会社を設立し、プログラムに取り組む参加者たち

市場調査では、参加者がメンターや運営スタッフに商品開発のためのヒントを探った

自分から大人に積極的に話しかけて調査を行う参加者たち

 イベントでは疑似通貨も使用し、金融機関役の担当者に融資の依頼も体験。会社を立ち上げ、事業計画書をまとめ、商品を販売して利益を計算。起業の疑似体験を通して、社会や仕事への理解を深めるのはもちろん、自主性やチームワークを養ってもらうのが目的だ。

 参加者は初対面なので、会社名や役職の決定について最初は遠慮がちに話し合っていた。それが市場調査や事業計画書の作成などプログラムが進行するにつれて、活発に意見を交わすように変化していく。販売になると、保護者や運営スタッフに向かって積極的に自分たちが考案した商品をアピールしていた。利益の計算で一喜一憂する姿も印象的で、1日という短い時間でも参加者の成長を垣間見ることができた。

事業計画書を作って自社のビジネスモデルをアピールし、融資の依頼を行う参加者たち

イベントで使用した疑似通貨

チャレンジすることが子どもたちの成長につながる

 最後の振り返りでは、参加者から「起業することの面白さがわかった」「自分はこの役割が向いていると感じた」などポジティブな声がでた。地域プロデューサーとして本事業に携わっている株式会社ココアイの古井千景さんは「終盤にかけて雰囲気が変わっていきました」と話す。

「参加者は中学1年生から高校3年生です。この年代では、物事の理解や仕事についての考え方の差は大きいと思います。それがお互いのことを理解しようとし、協力しながら役割を分担して取り組んでくれました。子どもたちからすると、チャレンジしたからこそわかることがあると思います。アントレプレナーシップについて理解がなくてもまったく問題ありません。楽しそうとか面白そうなど、少しでも気になることがあれば飛び込んでもらえたら幸いです。アントレプレナーシップは人生を前向きに切り開くために大切な教育です」(古井さん)

 イベントのプログラム提供・監修は株式会社セルフウイングが担当している。今回のイベントで講師を務めたセルフウイング認定講師の白橋瑠梨さんも「変化が見られてうれしかったです」と振り返る。

「最初は恥ずかしがって議論ができないかなと心配していましたが、終わってみれば起業について興味を持った方もいて、参加者の変化が見られてうれしかったです。アントレプレナーシップ教育は、学校で学んでいることの必要性を理解し、日常を楽しく前向きに変えることにつながると、私個人として感じています。起業したい、したくないに関わらず、ちょっとした興味があるなら一度参加してもらえるとうれしいです。やりたいことを叶えるきっかけづくりに、きっとつながると思っています」(白橋さん)

 今回も盛況に終わったイベント。岐阜県では、これからもアントレプレナーシップ教育に力を入れていく。ちなみに、岐阜県内の高校生を対象にしたビジネスプランコンテストも令和7年10月24日まで募集中。興味がある方はぜひこちらも参加してほしい。 (https://ascii.jp/startup/gifu-entre-event/contest/)

分担して商品やPR用ポスターの製作に取り組む様子

みんなの前で自分たちが考えた商品をアピール。ユニークな発表で会場を沸かせた

販売では、会場にいる人たちに向けて自社の商品をアピール。会場が活気付く

最後の振り返りでは、参加者がみんなの前で感想を述べた。堂々と発表する姿が印象的だった

セルフウイング認定講師の白橋瑠梨さん

株式会社ココアイの古井千景さん

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