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2025年9月26日
ポール・セッドン政治記者
イギリスのキア・スターマー首相は26日、イギリス全土において、デジタル身分証(ID)の保有を義務付ける計画を発表する。
政府高官によると、スターマー首相は、この制度が不法就労の取り締まりに役立ち、国家の近代化につながると考えているという。
制度の実務的な詳細は今後協議される。スマートフォンやパスポートを所持していない人々に、どのように対応するかも検討される見込みだ。
IDカードについては、20年以上前にトニー・ブレア労働党政権が導入を試みたことがあるが、最終的に保守党と自由民主党による連立政権によって阻止された。
しかしスターマー氏は、今月初めの取材で、この議論は「すでに進展している」と考えていると述べた。
「私たちは今、20年前よりもはるかに多くのデジタルIDを持ち歩いている。そして、それが心理的に異なる役割を果たしていると思う」と同氏は付け加えた。
報道によると、政府は新たな制度を用いて、人々がイギリスで居住・就労する権利を確認することを計画しており、個人のIDは中央データベースと照合されるという。
これらの確認作業は現在、物理的な書類に基づいて行われているが、一部の人々に対しては2022年以降、オンラインで完了できる手段も存在している。
デジタルID制度の計画は、昨年の労働党の選挙公約には盛り込まれていない。政府はこれまでに、元労働党首相のサー・トニー・ブレアが提案したデジタルID案を退けている。
しかしここ数週間、閣僚らはこの構想について、違法移民への対処を求める圧力が高まる中で、熱心に語っている。
パット・マクファデン内閣府担当相も、この制度が政府サービスへのアクセスを改善する可能性に言及している。
マクファデン氏は最近、エストニアを訪問した。同国ではデジタルIDを用いて、医療記録の閲覧、投票、銀行業務などのサービスにアクセスすることができる。
野党は「冷笑的な策略」だと非難
最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は、義務的なIDの導入は「国家的な議論を要する非常に重大な一歩だ」と述べた。
ベイドノック氏は、政府の発表を「切迫した目くらましの手法」だと批判。来週開催される労働党の年次大会を前に、グレーター・マンチェスター市のアンディ・バーナム市長による「指導者としての駆け引き」から世間の注意をそらすためのものだと語った。
ベイドノック氏は以前にも、デジタルIDは「イギリスにおける不法就労の問題を本質的には解決しない」と述べている。
野党リフォームUKも、この計画を「違法移民問題に対処しているかのように有権者をあざむく、冷笑的な策略」だと非難した。
同党は「すでに移民法を破っている者たちが突然従うと考えるのは滑稽(こっけい)だ。デジタルIDが、不法就労に何らかの影響を与えるとは到底思えない」と付け加えた。
「この制度がもたらすのは、法を守るイギリス国民の自由へのさらなる干渉だけだ」
前回の労働党政権によるIDカード導入を阻止する上で中心的な役割を果たした自由民主党は、義務的な制度は「支持できない」と表明している。
同党のヴィクトリア・コリンズ報道官(テクノロジー担当)は、「人々がデジタルIDを持てない、あるいは持たないことを選んだだけで犯罪者にされるべきではない」と述べた。
新たな左派政党を立ち上げる予定の元労働党党首ジェレミー・コービン議員は、義務的な制度に反対の立場を示している。
オンライン審査
イギリスでは雇用主はすでに、採用候補者がイギリスで就労する権利を持っているかを確認する義務を負っている。
2022年以降は、パスポートを所持するイギリスおよびアイルランド国民については、政府が認めたデジタル認証サービスで確認できる。
内務省のオンライン制度も存在しており、移民ステータスが電子的に管理されている一部の非イギリス国民または非アイルランド国民について、そのステータスを確認できる。
政府はまた、外国人居住者に対する物理的な許可証を段階的に廃止し、オンライン専用のeビザ(査証)へと移行させている。
関係者によると、政府当局は、デジタルIDの義務化が一貫した本人確認手法を提供できるかを検討しているとされる。
また、この制度が偽造書類の使用を減らし、取り締まり活動の標的を絞りやすくする可能性も模索しているとみられている。
市民的自由を擁護する団体「オープン・ライツ・グループ」は、eビザの導入をめぐり、すでにデータの誤りやシステム障害が発生していると指摘した。
同団体は今回の提案についても、「日常生活を送る中で常に自分が誰なのかを証明する必要があるような、プリクライム(犯罪予防)国家を生み出す危険がある」と述べた。
移民政策にも言及する見込み
スターマー氏は26日に参加する会議でこの案を発表する予定。また、同じ演説で、難民申請者向けホテルの外で抗議活動が相次いだ、移民をめぐる緊張についても言及する見通しだ。
訪英中のカナダのマーク・カーニー首相やアンソニー・アルバニージー豪首相なども参加するこの会議でスターマー氏は、首脳らに向け、「働く人々の問題に付け込む、略奪的な不満の政治」か、「愛国的な再生の政治」のどちらかを選ぶべきだと主張する予定だ。
また、インターネット上の議論の毒性について警鐘を鳴らし、「最も有害な信念が、ロンドンで1〜2週間前に行われた抗議活動で露呈した。それは、国家のために、すべての国家のために闘争が迫っているという、決定的で暴力的な闘争があるという信念だ」と述べる見込みだ。
スターマー氏はさらに、移民抑制に向けた自らの政権の取り組みを擁護し、「あまりにも長年にわたり、人々がこの国に来て、影の経済に紛れ込み、不法に滞在することがあまりにも容易だった」と述べる予定。
一方で、「外国人労働者を搾取し、公正な賃金を損なう労働力に依存することは、思いやりのある左派政治ではない」、「単純な事実として、すべての国家は国境を管理する必要がある」とも語る見込みだ。
この演説に先立ち、スターマー氏は英紙テレグラフに寄稿し、「長年にわたり、私自身の政党を含む左派政党は、不法移民に対する人々の懸念から目を背けてきた」と述べた。過去の労働党党首を名指しで批判することはなかった。
しかし、リフォームUKの「有害な手法」は否定し、「単純なスローガンでは、この問題を解決することはできない」と記した。
「万能の解決策は存在しないが、不法移民がイギリスの海域に入ることを阻止するために、可能な限りすべての手段を講じなければならない」

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