中国とはどのように向き合うべきか。イスラエルの元諜報部員のイタイ・ヨナトさんは「中国にとって現在の世界情勢は、戦争を始めるのに好都合な状況だ。日本はすでに認知戦に巻き込まれている。この対策を早く始めないと、取り返しがつかないことになる」という――。(第3回)


※本稿は、イタイ・ヨナト『認知戦 悪意のSNS戦略』(文春新書)の一部を再編集したものです。


中国の旗に向けられたミサイル

写真=iStock.com/e-crow

※写真はイメージです



もし数年後に「台湾有事」が起きるとしたら

中国は戦争の準備をしています。中国はいずれ台湾に対して行動を起こし、日本はまともな軍隊を持たないまま、紛争に巻き込まれる事態に直面するのです。


このような事態を想定してみましょう。日本の首相が、アメリカから「2027年か2028年に中国が台湾を攻撃する」という情報を得たとしましょう。日本と台湾は友好的な関係にあるため、中国は最初に日本を攻撃する可能性が高いと思われます。


そのとき日本の首相は、自衛隊の現状をみて愕然とするでしょう。軍艦も航空母艦も潜水艦も足りない、核兵器も海兵隊もない、と。


また、日本は諜報活動にも積極的ではありません。HUMINT(人との接触を通じた情報収集活動)の能力も十分ではありません。


そこで、首相は「いますぐ行動を起こそう。今日動かなければ手遅れになる」と決断します。ところが国会に赴いたら、左派からこのように批判されます。「いや、我々は軍備を増強しないと約束したじゃないですか。なぜ私たちの文化や日常を変えようとするのですか。我々は同意していませんよ!」


このような状況で、首相は一体何をするべきでしょうか。民主制度を尊重して、法に従って「議会の決断を待とう。彼らを説得する必要がある」と言うべきか。それとも「災難が迫っているから、超法規的措置をとろう」などと言うべきでしょうか。


分断でほくそ笑む中露の思惑

このような状況を想定してみると、日本では国家全体の中にいくつかの問題を抱えていることがわかります。「真実」は一つではなく、各人それぞれの「真実」があるからこそ分断され、多くの見解が出てくるわけです。


分断があると、意思決定ができなくなります。したがって、民主制度を信奉する社会であればあるほど行き詰まり、社会が機能しなくなり、民主制度は破綻するのです。


これは、ロシアや中国にとって好都合です。たとえば中国は「民主主義は失敗している。そして日本は間違っており、我々はその証拠を持っている」と言うわけです。しかも厄介なことに、彼らの議論を支持してくれるような証拠をわずかでも見つけると、彼らはそれを針小棒大に強調できるのです。


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