アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス会長は、現在の人工知能(AI)分野への投資ブームは「産業バブル」に似ているとし、投資損失を招く恐れがある一方で、社会をより良くする効果もあるとの見方を示した。

  イタリアのトリノで3日開催された「イタリア・テック・ウィーク」でベゾス氏は、製品を持たない段階で数十億ドルの資金を調達する企業があることに言及。「人々が熱狂に包まれるとき、例えば現在のAIのように、あらゆる実験に資金がつき、すべての企業に資金が集まる。良いアイデアも悪いアイデアもだ」とした上で、「投資家はこうした熱狂の中で、良いアイデアと悪いアイデアを見分けるのに苦労する」と述べた。

The New York Times Dealbook Summit 2024

ジェフ・ベゾス氏

Photographer: Eugene Gologursky/Getty Images

  同氏は現在の状況について、1990年代のバイオテクノロジー・バブルに似た「産業バブル」だと指摘。当時は企業が相次いで破綻し、投資家も損失を被ったが、「命を救ういくつかの薬は生まれた」と語った。さらに4半世紀前のドットコム・バブルにも言及。当時は投資が過熱した時期だったが、いまでは世界に恩恵をもたらしているとの認識を示した。

  ここ数年、AIを開発する企業のみならず、AIを支えるデータセンターや半導体、アプリケーションなど周辺技術を手掛ける企業にも巨額の資金が流れ込んでいる。大手テクノロジー企業にAI向け計算能力を提供する新興クラウド事業者(ネオクラウド)には、インフラ整備前の段階から資金が投じられている。

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  AIを巡る熱狂により、関連企業の企業価値は急速に拡大。ブラックロック傘下の投資会社グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)はアラインド・データ・センターズの買収に向け協議を進めているが、同取引ではアラインドの企業価値が約400億ドル(約5兆9000億円)と見込まれている。

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  対話型AI「ChatGPT」を開発するオープンAIは最近、従業員による保有株売却を支援する取引を完了。それに基づくと、同社の企業価値は5000億ドル(約73兆6000億円)に膨らみ、イーロン・マスク氏のスペースXを抜いて世界最大のスタートアップとなった。

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  一部の投資家は、AIエコシステムを構成する企業に流れ込む資金の規模に警戒感を示している。シンガポール政府系投資会社GICのブライアン・ヤオ最高投資責任者(CIO)は今週、AIの初期段階ベンチャー投資において「ハイプバブル(過剰な期待によるバブル)」が形成されつつあるとの見方を示した。

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  ベゾス氏は、長期的な視点を持つよう呼びかけている。「状況が落ち着き、勝者が見えてきたとき、社会はその発明から恩恵を受ける」と指摘。「今回も同じことが起きる。AIが社会にもたらす利益は極めて大きなものになるだろう」と語った。

原題:Bezos Says AI Spending Boom Is a Bubble That Will Pay Off(抜粋)

— 取材協力 Daniele Lepido

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