アングル:ウクライナ戦の共闘誇る露朝、モスクワで「最大規模」の北朝鮮美術展

9月30日、国外最大規模の北朝鮮美術展と銘打たれた展覧会がモスクワで開かれている。写真は同展覧会場で29日撮影(2025年 ロイター)

[モスクワ 30日 ロイター] – ロシアのクルスク地方でウクライナ軍に勝利したことを祝い、国旗を掲げて笑顔を見せるロシア軍と北朝鮮軍の部隊、そしてウクライナ軍と銃撃戦を繰り広げる北朝鮮部隊を描いた絵画──。

国外最大規模の北朝鮮美術展と銘打たれた展覧会がモスクワで開かれている。「敵対的な西側諸国」を前にロシアと北朝鮮が地政学的な結びつきを強めていることを示すものだ。

それだけではない。両国は、クルスク地方からウクライナ軍を退けるのに北朝鮮部隊が一役買ったことを長く公にしていなかったが、その事実を今やそろって誇示するようになった。広報姿勢の大転換がうかがえる。

「クルスク解放における北朝鮮の兄弟の偉業に頭が下がる」と、アレクサンドルと名乗る一般観覧者が美術展のコメントブックに書きこんでいた。

ウクライナ軍は昨年8月6日、ロシアの意表をついてクルスクに進軍し、一時期はクルスクの約1400平方キロメートルの地域を占拠した。ウクライナ側が自国軍への圧力を和らげるための作戦と位置付けたこの攻勢は、第二次世界大戦後で最大のロシア領土への侵攻となった。

ロシアのプーチン大統領は4月、ウクライナ軍を退けたことを祝福するため軍の指揮官に電話した際、「肩を並べて」共に戦った北朝鮮軍を称賛した。北朝鮮軍のクルスク派兵が公言されるようになったのは、同月からだった。

ロイターの調査報道によれば、北朝鮮軍の派兵と北朝鮮製武器の供与は、ロシアに戦場で決定的優位をもたらした。その代償は大きかった。英軍情報部は、約1万4000人の北朝鮮部隊は6000人以上の死傷者を出したと推定している。

<社会主義リアリズム>

モスクワ中心部にある装飾芸術美術館の一部を会場としたこの「北朝鮮の美術、偉大な人々の国」展には100点以上の絵画やその他美術品が展示され、会場の入り口には、プーチン氏と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が握手を交わす巨大な写真が掲げられている。出品作品の多くは旧ソ連の社会主義リアリズムをほうふつとさせる画風だ。

ソ連風の「高級」集合住宅を眺める幸せそうな家族が描かれ、ミサイルが発射される様子や、収穫物を集める農作業員の笑顔が描かれている。1950─53年の朝鮮戦争の戦闘シーンなど、北朝鮮側の好む題材を描いた絵もある。

例えば、「血に飢えた米国の獣たち」と題された一枚には、血まみれのブラウスを着た北朝鮮の女子学生に向かって斧を振り回す米兵が描かれていた。

<戦略的パートナーシップ>

ロシアと北朝鮮は2024年に包括的戦略パートナーシップ条約を結んだ。プーチン氏を「親愛なる同志」と呼ぶ金総書記は、自国は常にロシアの味方だと約束している。

米国と韓国は、北朝鮮がウクライナとの戦争で使用する兵器をロシアに輸出していると非難している。ロシアと北朝鮮はいまも兵器提供を否定しているが、他分野の協力関係についてはより積極的に公表するようになっている。

この夏、モスクワと平壌を結ぶ直行便が1990年代半ば以来初めて再開され、1万キロを超える直行の列車路線も開通した。ロシアは、世界最長の直行列車路線だとしている。団体旅行で北朝鮮での休暇を選ぶロシア人観光客もいる。旅行代理店は、日本海沿岸の元山カルマという新しいビーチリゾートを宣伝している。

美術展を訪れたオルガさんは、北朝鮮に対する見方が変わったと話した。それまでは報道やステレオタイプしか知らなかったが、現地の人々がどのように暮らしているのかを知る貴重な機会になったという。

「自国の意見を主張し、自国の利益を守る国は、尊敬に値すると私は思う」と、彼女は話した。

近くには、プロパガンダのアーカイブ映像を流すモニターが置かれ、黒いスーツに身を包んだ北朝鮮の外交官が警戒の目を光らせていた。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

Andrew Osborn

As Russia Chief Political Correspondent, and former Moscow bureau chief, Andrew helps lead coverage of the world’s largest country, whose political, economic and social transformation under President Vladimir Putin he has reported on for much of the last two decades, along with its growing confrontation with the West and wars in Georgia and Ukraine. Andrew was part of a Wall Street Journal reporting team short-listed for a Pulitzer Prize for international reporting. He has also reported from Moscow for two British newspapers, The Telegraph and The Independent.

WACOCA: People, Life, Style.

Exit mobile version