Rソシエダードは1勝2分け4敗の18位と、ここ10年間で最低の成績で第7節を終えている。近年、欧州チャンピオンズリーグや欧州リーグに参戦し、国王杯で上位に進出していたチームに一体何が起こっているのか。
今季、監督とスポーツディレクターが一新されたことはチームとって大きな変化となった。苦戦する可能性はシーズン開幕前から指摘されていたが、これほどとは誰も思っていなかっただろう。
■センターFWの補強なく
新チームを率いるセルヒオ・フランシスコは、昨季Bチームを2部昇格させた手腕を買われ、今季トップチームの新監督に抜擢されたが、1部リーグで指揮を執るのは初めて。当然、どこまでやれるのかは未知数の状況だった。
さらに補強の動き出しが鈍く、メンバー確定が9月1日の移籍市場最終日までかかった。これも現在まで続く低迷の大きな原因のひとつだろう。チームの支柱であったスビメンディを、7月上旬に7000万ユーロ(約119億円)でアーセナルに売却したにもかかわらず、選手の補強を開始したのはプレシーズンも終わりに近づく8月に入ってから。
さらにメンバーのオーバーブッキングによる人員整理が急務となり、デ・サラテ、オラサガスティ、トラオレの3人を計1000万ユーロ(約17億円)で売却。マグナセライアとベッカーをフリーで放出し、ハビ・ロペス、パチェコ、カルロス・フェルナンデスを期限付き移籍させた。その一方、戦力外だったサディクとオドリオソラはチームに留まった。
近年の補強に関しては、現地では以前からあまり効果的ではないとの批判が出ている。主力選手を次々と売却し、莫大な収入を得ているにもかかわらず、その資金をうまく生かせていないと指摘されているのだ。中でも、得点力不足が課題のチームにとって、センターフォワードの補強は最優先事項だったはずだが誰も獲得していない。
移籍金収入は8000万ユーロ(約136億円)あったが、クロアチア代表DFチャレタ=ツァル(期限付き移籍)、元ポルトガル代表FWゲデス、ベネズエラ代表MFヤンヘル・エレーラ、元スペイン代表MFカルロス・ソレール獲得の投資額は、2150万ユーロ(約36億5500万円)。
4人のうちレギュラーとして昨季活躍していた実績があるのは、セルヒオ・フランシスコ監督が優先的に求めたタイプの選手であるヤンヘル・エレーラのみ。ベネズエラ代表デビューは18歳と国際経験豊かで、近年成功を収めたジローナでボランチやインサイドハーフとして不動の地位を築いていた。活躍を期待されながらも今季開幕後の負傷により、10月半ばまで復帰を待たなければならないのが、チームにとって痛手となっている。
■6戦目でようやく初白星
ジョキン・アペリバイ会長が以前から獲得を熱望していたカルロス・ソレールは、パリ・サンジェルマンで戦力外となり、プレシーズンは1分も出場しない状態で移籍してきた。コンディションはまだ万全とは言い難いが、デビュー戦で見せた久保と素晴らしい連携は、新チームに明るい兆しを感じさせるものだった。
チャレタ=ツァルは即座にレギュラーの座を射止めたものの、久保のバックアップを務めるゲデスとともに、ここまで満足いくパフォーマンスを発揮しているとは言い難い。
また、セルヒオ・フランシスコ監督はゴロチャテギとゴティをトップチームに昇格させた。スビメンディの後継者として指名されたゴロチャテギはレギュラーの座を確保しているが、チームの低迷もあってそこまで高評価は得られていない。
新監督就任、補強の遅さ、メンバーが確定できない状況といった多くの問題に対応できないまま日本ツアーも敢行し、準備不足のチームは昨季終盤から続く不調に拍車をかけるかのように、今季は悪夢のようなスタートを切った。
開幕から5試合連続で先制点を奪われ、未勝利が続き、初白星は第6節マジョルカ戦まで待たなければならなかった。リーグ戦7試合を終えての勝ち点はわずか5で、降格圏内の18位。この勝ち点の少なさは14-15年シーズンと昨季に並ぶ近年ワースト。これより酷い状況は、第15節まで勝てず最初7試合の成績が2分け5敗の勝ち点2で、最終的に2部に降格した06-07年シーズンまで遡らなければならない。
上記では主にクラブの体制による問題点を挙げたが、ピッチ内では特にミスの連発が目立つ守備面が問題として挙げられる。今季唯一のクリーンシートを達成した第6節マジョルカ戦で大きく改善され、第7節ではバルセロナ相手に粘り強く戦ったが、セットプレーの弱さを露呈した。
■久保のプレーゾーンに変化
攻撃面は昨季と変わらず得点力不足の問題に悩まされている。今季、久保が足首に問題を抱えていることもあり、現地ではバレネチェア(1得点3アシスト)とオヤルサバル(2得点1アシスト)に依存しているとの見方がある。
中でもバレネチェアはキャリア最高とも言えるパフォーマンスを見せつけ、スペインリーグ屈指のドリブラーへと変貌を遂げている。その影響によりRソシエダードの攻撃は特に最近、左サイドに偏る傾向にある。例えば勝利したマジョルカ戦、右サイドからの攻撃が30・6%、中央が22・3%であったのに対し、左サイドからが47・1%と約半分を占めていた。
バレネチェアが今季スペインリーグでドリブルを試みた回数は36回(1試合平均5・1回)で、バルセロナのヤマル(39回)、レアル・マドリードのエムバペ(38回)に次ぐ3位。ドリブル成功数は21回(1試合平均3・0回)で、エムバペ(25回)に次ぎ、ヤマルと並ぶ2位。バルセロナ戦の先制点でのアシストで示したように、1対1で圧倒的な強さを見せている。さらにクロスの数も36回で5位だ。
左サイドからの攻撃が増えている要因には、久保がイマノル・アルグアシル監督時代よりもプレーゾーンを拡大し、右に張るだけでなく中に入るプレーが増えていること、それにより縦に仕掛ける回数が減っていることも挙げられるだろう。
久保が昨季ドリブルを試みた回数の1試合平均は3・9回、ドリブル成功数は2・1回だったのに対し、今季はそれぞれ2・4回(計17回)、1・0回(計7回)となっている。
さらに、バルセロナ戦後に本人が「代表ウィークも含めて治せる時に治したい」と次節ラヨ・バリェカノ戦、さらには今月の代表戦(パラグアイ、ブラジル)を欠場する可能性を示唆したように、メキシコ戦で痛めた足首の問題を抱えながらここ4試合プレーし続けていることも大きく影響していると思われる。
Rソシエダードはこの後、ラヨ・バリェカノ戦を経て、今季2度目の国際Aマッチ期間を迎える。その後、ヤンヘル・エレーラが復帰することでようやく全メンバーが揃うことになる。ここからチームがどのような変化を見せてくれるのかに注目したい。【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)
Rソシエダード久保(2025年7月撮影)

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