9月9日、高知県高知市で行われた「こうち外国人材優良サポート事業者認証書授与式」。
高知県は県内で働く外国人に『暮らしやすく、働きやすく、学びやすい』という3つの観点で環境整備をしている県内の事業者を優良サポート事業者として認証する制度を2025年度に設けました。
式には8月末時点で認証を受けた16事業者のうち15事業者が出席し、濵田知事から認証書を受け取りました
三ツ星を取得した企業の一つが高知市の上田電機です。
産業用機械の製造を行う上田電機では21人いる従業員のうち5人がベトナム人の技能実習生で、溶接部門や電気機器組み立て部門で働いています。
上田電機が外国人に対する環境整備で評価されたポイントの1つは日本語教室を事業所内に設けていることで、毎朝15分、就業時間内に日本語教師の資格を取った社員が日本語を教えています。
使用するテキストも技能実習生5人がベトナムにいる時に使っていたものを使うなどなじみやすいよう配慮しています。
■上田電機 横山さん
「よく言われるのは日本語検定のN4やN3レベルになってほしい。でも弊社としてはベトナムに帰った時にもし日系の企業で働くってなった時に彼らが不自由しないくらいの日本語の正しい文法を身に着けてほしいという思いでやってます」
敬語があり文法が複雑な日本語ですがベトナム人技能実習生は日本で働くために努力を続けています。
■ベトナム人技能実習生
「日本語の勉強はちょっと難しいけど、自分のために毎日日本語を勉強しています」
また上田電機では長く働き、技術力のついた技能実習生の待遇を日本人と同じにしました。
2025年に日本人と同じ待遇で主任となった技能実習生5年目のアンさん(28)です。
溶接部門で管理業務を担うアンさんはこの先も長く上田電機で働くつもりです。
■技能実習生・アンさん
「家族にお金を送りたいから日本で働いている。上田電機が好きです。みんなが優しい。仕事がわからない、日本語がわからないとみんなに教えてもらう」
1993年に導入された技能実習制度では日本で技能を学びたい外国人が最長で5年間働くことができます。通常は、その後帰国しますが、2019年から人手不足が深刻な産業に限り一定の専門性や技能を持つ外国人がさらに特定技能1号、特定技能2号として就労目的で働けるようになり、2024年末時点で全国の技能実習生は約45万6000人、特定技能は約28万4000人に上っています。
アンさんはいま特定技能となることを目指しています。
■技能実習生・アンさん
「先週の金曜日、試験があった。(技能実習)5年終わった後、もっと高知のこの会社でまた3年5年くらい働けると思う。それが終わったら、OPTSY(上田電機のベトナム工場)に入る。」
上田電機の上田社長は日本の人口減少からくる労働者不足は深刻で、外国人材は欠かせないと考えています。
■上田電機・上田社長
「私たちの工場で働いているメンバーがどんどん日本人が減っているというのはやっぱり現実。ベトナムのような人口がまだ増加しているような国に自分たちもどんどん力を借りていくことが必要かなと思っている」
ベトナムにも工場がある上田電機では技能実習を終えて帰国した人たちに現地で働いてもらうようにしています。ベトナムの若者は両親の考えを最も重視するということで上田社長はベトナムにある従業員の実家を訪問して家族と積極的に交流を図ってきました。
■技能実習生・アンさん
「社長は僕の家に来て家族と一緒に話してパーティをした」
■上田社長インタ
「やっぱり会うことっていうのがすごく大事かなと思って。会って言葉は通じないんですが通訳を介しながらお互いの思いというのをきちっと理解する。私たちが訪れると必ず実習生の家族、またはその親戚の方々が10人、20人と集まってくださって一緒に食事を取り囲む」
アンさんの実家も訪れたという上田社長。10月にはアンさんの弟の結婚式にも出席するということです。
一方で、こうした外国人材に働きやすい環境整備や日本人と同じ待遇といった要素は今後ますます事業者に求められてきます。
実は技能実習制度は2024年廃止が決まり、2027年には育成就労制度という新たな制度へ移行します。
育成就労制度とは途上国への技能移転ではなく人手不足対策が主な目的で特定技能への移行を促します。
今の技能実習制度では働く場を変える=転籍ができませんでしたが新制度では転籍が可能になります。
つまり、働く場を外国人が自由に選べるようになるため賃金などの待遇や職場環境がこれまで以上に問われるようになります。
近く変わる制度や世界情勢について移民政策に詳しい国立社会保障・人口問題研究所の是川夕部長に話を聞きました。
Q.世界の中で日本は働く場としてどうみられている?
■国立社会保障・人口問題研究所 是川夕部長
「諸外国についてはある意味もう十分に受け入れてしまっているので、これ以上受け入れはなかなか難しい状況にあるとみている。アジアの他の国との関係で言うと、日本が長期に働けるという点で実は一番人気があるという状況」
Q.外国人受け入れに関する批判的な声については?
「ほとんどが事実誤認に基づくもので、実際全国各地、特に地方で数多く受け入れている。職場の同僚としても極めて優秀だし、地域においてもさまざまな面で地域の担い手になっている。既に日本社会を支える側に回ってくれているのに、それをなきものにしようというのは非常にもったいない状況だと思う」
Q.今後日本社会に必要なことは?
「これから増えていくところが特定技能1号から2号。1号までは単身で若い人が多いが、2号になるともっと熟練したスキルを持ち、生活も安定する中で家族を呼ぶという人も出てくる。そういう時にこれまでは職場でしっかりと受け止めていればよかったが、子育てとかそういったことについてもさまざまなニーズがでてくる。家族の支援が地域において優秀な外国人材に来てもらうために必要不可欠だと思う」
人口減少の中各分野の生産力の維持にもはや欠かせない外国人材。
県が始めた認証制度や事業者が取り組む働きやすい職場づくりは外国人材の定着を目指すものです。
まもなく始まる新たな受け入れ制度や制度に伴い生じる課題に対応できるよう私たちは世界を俯瞰し多様な視野を持って準備することが大切です。
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