米国が英国産鉄鋼に課している25%の関税について、英政府は撤廃を目指して米国と進めていた協議をひそかに棚上げした。関税撤廃を待ち望んでいた英鉄鋼業界に打撃となる。

  事情に詳しい関係者によると、トランプ米大統領の国賓としての英国訪問に合わせ、スターマー英首相は鉄鋼関税撤廃に向けた交渉を先送りした。その見返りとして、米国側は鉄鋼関税を25%に据え置くと確約。これは他国に課している50%を下回る水準だが、英国企業は依然としてダメージが大きいと訴えている。

  トランプ氏は16日、国賓として2度目の英国訪問に出発する前にホワイトハウスで記者団に対し「英国側は協定合意をもう少し調整できないか見極めようとしている」と述べ、「われわれは合意を成立しており、素晴らしい合意だ。英国を支援したい」と続けた。

  英国に到着した際には記者団に対し「英国は非常に特別な場所だ」と述べた。

  関係者によると、英国交渉団は今後も米国側と協議を継続し、時間をかけて鉄鋼関税の撤廃を目指す。ただ、トランプ氏の訪英前にまとめられた今回の確約は、訪問を機に英国産鉄鋼への関税撤廃が正式に決まると期待していた企業にとって失望となる。

英国との貿易交渉について語るトランプ米大統領

Source: Bloomberg

  英国は、米国と最初に貿易協定を結んだ国となったが、当初の合意には多くの重要事項が盛り込まれておらず、詳細は今後の交渉に委ねられていた。6月には、トランプ氏とスターマー氏が一部の英国製品に課す関税の引き下げで合意したが、英国側は特に鉄鋼関税の扱いについて、さらなる緩和措置を望んでいた。

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  トランプ氏は「米国は非常に好調だ。これほどの好調ぶりは前例がない。関税によって数兆ドル規模の収入がある。彼らはもう少し有利な取引ができないか見極めようとしている」と主張した。

  通商協議に加え、今回の訪英でトランプ氏は100億ドル(約1兆4600億円)を超える新たな経済合意を発表すると見込まれている。

  匿名を条件に語った当局者によれば、数十億ドル規模の新規投資を含む科学・技術パートナーシップの発表も予定されている。トランプ氏とスターマー氏は18日のビジネス会議に出席する予定で、同会議には対話型人工知能(AI)ChatGPTを展開する米OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)や、AI半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアンCEOなど、米国の主要テクノロジー企業の幹部が多数参加する見通しだ。

原題:UK Puts on Hold Efforts to Negotiate End to US Tariffs on Steel(抜粋)

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