長野県立美術館(長野市)で「東山魁夷館開館35周年記念展 東山魁夷 永遠の海 ―私は、いま、波の音を聴いている」が10月4日から開催されます。東山魁夷館の開館35周年を記念して皇居宮殿壁画《朝明けの潮》の原寸大下図が、額装後初公開されます。

東山魁夷館開館35周年記念展
東山魁夷 永遠の海 ―私は、いま、波の音を聴いている

会場:長野県立美術館 展示室1・2・3(長野市箱清水1-4-4)

会期:2025年10月4日(土)~11月16日(日)

開館時間:9:00~17:00(最終入場は閉館30分前まで)
※夜間特別開館:10月11日(土)は20:00まで開館

休館日:毎週水曜日

観覧料:一般1,700円/大学生1,300円(コレクション展[本館・東山魁夷館]との共通券は一般2,200円、75歳以上2,000円、大学生1,600円)
※高校生以下または18歳未満は無料
※障がい者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料

問い合わせ:
TEL 026-232-0052
ハローダイヤル 050-5541-8600(9/16~11/16)

アクセス:JR長野駅善光寺口よりバス約15分「善光寺北」下車徒歩約3分 上信越道「長野IC」より車で約30分

公式SNS:X(旧Twitter) Instagram Facebook
詳細は、長野県立美術館公式サイトまで。

開催概要

東山魁夷館は、画家本人からの作品寄贈により1990年に開館し、今年開館35周年を迎えました。寄贈作品の中には多数の下図やスケッチが含まれ、作品の制作過程なども合せて紹介してきました。こうした下図の中には、東山魁夷が手掛けた襖絵や壁画など、大型作品の原寸大の下図もいくつか含まれています。

特に皇居宮殿壁画《朝明けの潮》の原寸下図は、1面が縦約4m、横2.5mにもなり、さらにそれが6面から構成されるという大掛かりなもので、既存の状態では公開が難しく、寄贈されてから今日までほとんど公開できずにいましたが、長野県立美術館では、開館35周年を記念してこの大下図を額装し、展示公開できるよう2年をかけて整備しました。

この大下図が6面揃って公開されるのは、1968年11月の皇居宮殿落成後に、松屋銀座で開催された「朝明けの潮・京洛四季」展に展示されて以来、57年ぶりです。また、皇居宮殿にある本画は通常一般公開されていないため、皇居外で完成作と同じ大きさを体感できるのは長野県立美術館のこの大下図のみです。本展では、この《朝明けの潮 色分け大下図》(1967年)を中心に、皇居宮殿壁画《朝明けの潮》の制作過程にスポットをあて、下図や資料と合わせて紹介します。

また、《朝明けの潮》は、画家が日本の美に回帰するきっかけとなったことから、東山魁夷が描いた日本の風景を、代表作《残照》(1947年)、《道》(1950年)などとともにご紹介します。

《道》 1950年 東京国立近代美術館蔵
展覧会の見どころ
1.皇居外では長野県美のみ!原寸大の 《朝明けの潮》

皇居宮殿壁画《朝明けの潮》は、通常非公開の作品で、海外からの賓客など限られた人々しか見る事が出来ません。長野県立美術館の《朝明けの潮 色分け大下図》は、本画のような煌びやかさはありませんが、モチーフの構図や下図の線からは作品の骨格が際立ち、彩色も最小限ながら、波のグラデーションには画家が追求した自然の波の形と日本伝統の波模様の融合をみることができます。そして何より原寸サイズの巨大な画面から、本画の迫力と東山魁夷が見た日本の海景の雄大さを体感できます。

東山魁夷《朝明けの潮 色分け大下図》1967年 長野県立美術館蔵
2.東山魁夷の代表作が多数出品!

本展では東山魁夷が描いた日本の風景の代表作も多数展示します。《朝明けの潮》の制作に関連した下図類に加え、戦後、初めて日展で特選を受賞した《残照》(1947年)や、広く一般にも知られるきっかけとなった代表作《道》(1950年)を展示します。また、戦前の優品《自然と形象 雪の谷間》《自然と形象 秋の山》《自然と形象 早春の麦畑》なども展示します。

《自然と形象 雪の谷間》 1941年 個人蔵
《自然と形象 秋の山》 1941年 個人蔵
《自然と形象 早春の麦畑》 1941年 個人蔵
名作続々!主な展示作品を紹介
《霧》 1951年 個人蔵
《門》 1952年 千葉県立美術館蔵
《谿紅葉》 1968年 兵庫県立美術館蔵
《晴れゆく嶺》 1982年 衆議院蔵
《波響く磯》 1983年 参議院蔵
東山 魁夷 作家略歴

日本画家、横浜生まれ。本名、新吉。3歳の時、神戸に引越し同地で育つ。1926年、東京美術学校日本画科に入学。卒業後、同校研究科に入学し結城素明に師事、雅号を「魁夷」とした。研究科修了後、2年間ドイツに留学して西洋美術史を学び、欧州各国の美術を精力的に見てまわった。1947年《残照》が日展で特選受賞、1950年日展に《道》を発表、一躍「国民的画家」と呼ばれる存在となる。1969年文化勲章受章。日本だけでなく北欧やドイツ、オーストリアの自然や風景を数多く描く。また皇居宮殿壁画や唐招提寺御影堂障壁画など障壁画にも傑作を残した。

昭和から平成にかけ、日本画家として名声を極めた東山魁夷の最高傑作のひとつとされるのが、皇居宮殿の壁画に描かれた《朝明けの潮》です。しかし本作は残念ながら一般非公開。画家は、この作品と同様の構図での作品をいくつか残していますが、もっとも《朝明けの潮》の迫力を伝える作品が、長野県立美術館が所蔵する大下図でしょう。本展は、その原寸大大下図全6面を額装のうえ一挙公開。あわせて公開される《朝明けの潮》の制作過程を今に伝える資料群等も必見。ぜひ、画家が追求したダイナミックな海景を心ゆくまで楽しんでみてはいかがでしょうか。(美術展ナビ)

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