コンビニエンスストアのローソンが千葉県内の6店舗の駐車場にて実証実験中の車中泊施設「RVパーク」。ローソンの立地と利便性、そして24時間人がいることの安心感は、車中泊にどのような影響があるのか、現場で見てきた

 旅行の楽しみとして、どこに泊まるかというのは大きなポイントの1つだ。立派なホテルや格式のある旅館、雰囲気のよい温泉宿などなどあるが、近年はそうした要望のほかに「行きたいところに行く」「ペットと一緒に行く」など、旅を自由にプランニングすることに重点を置く人が増えている。

 そしてそういう人たちが選んでいる宿泊スタイルの1つが車中泊。寝泊まりができるクルマで現地まで出かけて、クルマを止められる場所で休憩や就寝など行なうというもので、この方法であれば宿泊施設のない地域であっても泊まりがけの滞在が可能。また、ペット連れOKの宿を探す必要もないので、自由に旅がしたい人にとっては最適な選択とも言える。

 そしてその車中泊ユーザー増加の勢いを後押するのが、日本RV協会が展開を進めている「RVパーク」の存在だ。

 RVパークとは日本RV協会が「快適に安心して車中泊ができる場所」と認定した車中泊施設のことで、開設の条件としては大型車でも駐車ができるスペースがあること、24時間利用可能なトイレがあること、100V電源が使用可能なこと、入浴施設があること、もしくは近隣にあること、ゴミ処理が可能なこと。また、車中泊は深夜到着や早朝出発もあるので、そうした入退場に対応すること、複数日に渡る滞在が可能なこと、そしてRVパークの看板の設置が可能なことなどが挙げられる。

 RVパークが開設されているのは道の駅の一角や温泉旅館、ホテルなど宿泊施設の駐車場を利用するもののほか、オートキャンプ場のような滞在型として作られた施設もある。さらに普通のキャンプのように車外での調理や焚き火などが可能なところもあるなど、施設ごとに個性があるので、各地のRVパークを巡る車中泊旅を楽しむユーザーも増えている。

 そんな個性的な宿泊施設であるRVパークの新たな展開として、2025年7月14日より実証実験が開始されたのがコンビニエンスストア「ローソン」の駐車場でのRVパーク運営だ。前記したように、現在は旅のスタイルが多様化していて旅の手段として車中泊を選ぶ人は大幅に増えている。それと同時にキャンピングカーの保有台数も年々増えていて、日本RV協会が発表したデータでは2024年の段階で、日本のキャンピングカーの台数は16万5000台となっているということだ。

今回の取材では「ローソン富津湊店」(千葉県富津市湊1238-1)に行ってきた同店には22台分の駐車スペースがあり、そのうち2台分をRVパーク利用者用の1つの車室としている。写真では片側のスペースのみに駐めているが、その隣のスペースを含めて1つの車室だ現状、クルマのサイズについての決まりはないようだが、横幅に余裕があり、縦の長さもそれなりにあるので大型のキャンピングカーでも対応できるだろう

 このような成長が見られる車中泊界隈だけに、安心して利用できるRVパークの存在はとても重要なものになっているが、実際のところ車中泊は旅のスタイルがさまざまなので、滞在を楽しむのではなく、旅の途中に立ち寄って休憩と食事、そして寝泊まりをすることに特化したRVパークも求められている。ローソンの駐車場を利用するRVパークはその要望にぴったりはまるものと言えるだろう。

ローソンの駐車場を利用するRVパークは旅の目的地ではなく、中間地点として使える施設である

 その理由としていくつか挙げると、まず、旅の中継点として立ち寄る場合は宿泊地の到着が夜遅くになることもある。そんなときでもローソンであればクルマの乗り入れはしやすいし、駐車場の整備も行き届いているので駐めることもスムーズに行なえる。

 それと地方に行くと食材を買うためのスーパーマーケットの数が少なかったりするし、ナビでスーパーマーケットを検索して候補の店名を見ても、そこからお店の規模などが想像しにくく、行ってみたら小さい店でほしいものがなかった、なんてこともある。

 その点、ローソンであればお店の規模は誰でも想像できるし、言ってみれば食べ物、飲み物が充実しているのはもちろんのこと、生活用品も扱っているので宿泊に必要な歯磨きやタオルなども手に入るし、下着などの衣料品も購入できる。また、明日からの旅のために飲み物やおやつ、ティッシュなどの物資補給もできる。それにトイレもある。

店内のキッチンで調理したお弁当などを並べる店舗もある。ローソン富津湊店もそのタイプのお店なのでお弁当の種類は豊富。野菜、果物も手に入り、食事が簡単でありつつ彩りのあるものになるローソンで購入したもののゴミであればお店で捨てられる。また、後述するが、受付の際に生ごみ用の袋をもらえるので、それに入る分であればお店で処理してもらえる日用品も置いてあるので、何か足りなくても困ることはない無印良品のコーナーもある。下着や簡単な衣類も買えるので、着替えが足りなくなった時でも便利カー用品コーナーもあった。置いてあるのは清掃・洗車用グッズが多かった

 さらに大きなポイントとして挙げたいことがある。それは店舗が24時間営業であり、そこにスタッフの方がいるということ。

 車中泊は薄い幕のみのテント泊よりもずっと安心感は高いのだが、それでも誰もいない駐車場でひと晩を過ごすことは多少の不安を感じることもある。

 実際、筆者も姉妹誌「トラベルWatch」の企画で毎月RVパークを利用して回っているのだが、これまでにも夜間に人がいなくなってしまう施設に泊まることはあった。しかも、取材ということで他の利用者がいない日を狙って行っているので、夜は本当に1人になる。

 その状況には慣れているのだが、「不安は一切ない」というと嘘になる。なので店舗にスタッフがいることは夜の時間を落ち着いて過ごし、安心して寝られる大事なポイントになると思う。

夜間、側に人がいることは心強いものである

 ローソンの駐車場を使ったRVパークは現在実証実験中で、期間は2026年6月30日まで。実施店舗は千葉県内の6店舗となっていて、利用の際はRVパークの予約サイトである「RV-Park.JP」より行なう。利用料金は2500円~3000円(1回/1区画)。支払い方法はクレジットカード決済のみとなる。チェックインの時間は18時以降となっているので、これより早い時間に到着した場合は駐車場で待つことになる。

 受付は店舗のレジでRVパークを予約したことを伝えると、スタッフの方の予約確認後、専用の車室への案内。利用許可証・注意事項記載用紙・ゴミ袋1枚の受付セットが手渡される。また、敷地内の電源から車内へ電気を引くための電源ドラムが貸し出される。

 RVパークとして駐車場を利用する際は、駐車枠2つを1つの車室として利用することができる。これは大型のクルマへの対応と言うだけでなく、一般利用者のクルマとの駐車間隔を広く取ることで、宿泊の環境を向上させる狙いがある。そしてチェックアウトは9時となっている。

千葉県内で実証実験実施中の店舗はこちら

 以上が千葉県内で展開しているローソンの駐車場を使ったRVパークの実証実験の内容である。「コンビニの駐車場に泊まる」という取り組みはクルマでの旅だからこそ意味のあるもの。いろんなデータを集めている2026年6月までの実証実験期間、ローソンのRVパークを使用して、その感想を貴重なデータとして提供してみてはいかがだろうか。

この取り組みが全国のローソンに広がれば、車中泊の旅がよりやりやすくなることは間違いないだろう

WACOCA: People, Life, Style.

Exit mobile version