もはや頼みに綱は防衛産業のみ?写真はドイツのレオパルト1戦車(写真:ロイター/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 ユーロ圏経済が大きく揺れている。

 フランスの国民議会が9月8日、バイル内閣の信任投票を反対多数で否決したからだ。

 バイル氏は予算案に438億ユーロ(約7兆5000億円)の財政健全化策を盛り込んだ。フランスの昨年の財政赤字の国内総生産(GDP)比は5.8%と、欧州連合(EU)の財政規律「3%ルール」を大幅に上回っており、財政再建が急務であることを踏まえての措置だった。

 だが、バイル氏の提案は年金支給額の凍結や祝日の削減など国民の負担増となるため、強い反発を招き、野党の支持を得られなかった。

 マクロン大統領は9日、側近のルコルニュ国防相をその後任に指名したが、野党は一斉に反発している。マクロン氏自身は大統領の職にとどまることになるが、「政治的な影響力をほとんど失った」との見方が広がっている。

 政治の混迷のせいでフランス10年物国債利回りはユーロ圏創設以来、初めてイタリアを上回った。フランスの財政が欧州最悪レベルに悪化することが懸念されている。

 気がかりなのは、これまでユーロ圏の危機を救ってきたドイツ経済も不調なことだ。

 ドイツ連邦議会の予算委員会は5日、2025年予算案をとりまとめた。昨年11月に連立政権が崩壊したため、これまで暫定予算でしのいできたが、ようやく正式な予算が議会で承認される見通しが立った。

 インフラ投資と国防費が増額されたことで歳出総額は5025億ユーロ(約87兆円)と膨らみ、ドイツの今年の財政赤字のGDP比は3.3%となった。フランスと同様にEUルールを上回ったドイツについても「フランスと同様、財政危機に見舞われるのではないか」との憶測が流れ始めている。

 さらに心配なのは、ドイツ経済に回復の兆しが一向に見えないことだ。

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