欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は10日、フランス・ストラスブールの欧州議会で施政方針演説を行い、多方面で課題に直面する中、EUが自立性を取り戻し防衛能力を強化する必要性を訴えた。

  演説でフォンデアライエン氏は「欧州は戦うべきだ。多くの大国が欧州に対してあいまいな態度、または公然と敵対的な世界における、自らの立場のために」と呼びかけた。

  フォンデアライエン氏は、ロシアのウクライナ侵攻、パレスチナ自治区ガザでの民間人の惨状、EUの現行防衛体制に言及し、EUの主権に対する脅威を指摘した。また「帝国主義的野心」や「依存関係が冷酷に武器化される世界」といった表現を使い、欧州と世界大国との関係の変化にも触れた。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は10日、フランス・ストラスブールで施政方針演説を行った

Source: Bloomberg

ロシア

  演説の数時間前には、ポーランドが領空に侵入したロシアのドローンを撃墜した。フォンデアライエン氏は、「欧州はポーランドと完全な連帯を示す」と述べ、ウクライナ向けの60億ユーロ(約1兆円)の融資について、特にドローン購入を対象に前倒しすると述べた。

  EUにとって、今や防衛は最優先課題となった。2030年までに再軍備を急ピッチで進め、あらゆる脅威、特にロシアからの脅威に自律的に対処できる態勢を整えようとしている。

  フォンデアライエン氏は、凍結されたロシア資産をウクライナ向け融資の担保に充てる計画を改めて強調したが、資産そのものには「手をつけられない」とした。この問題は、加盟国間で深刻な意見の対立を引き起こしている。

通商

  フォンデアライエン氏は演説で、物議を醸した米国との通商協定を擁護した。協定では、EUが米国産工業製品への関税をゼロに引き下げる一方、米国は欧州産品に15%の関税を課す。フォンデアライエン氏は、交渉で認められた例外措置や他国が被る追加関税を考慮すれば、この協定が「現時点で可能な最良の取引」だと強調した。

  また、中国やその他の生産国からの安価な輸入品による厳しい競争が世界的な過剰生産能力を助長している現状を踏まえ、既存のセーフガード措置の期限が切れた後、欧州鉄鋼業界への保護措置を欧州委員会が提案する考えも明らかにした。今月末までに提案される見通しだ。

原題:Von Der Leyen Urges EU to Fight for Place in a Hostile World (1)(抜粋)

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