フランスのバイル首相は9日、前日の国民議会(下院)での不信任決議を受け、正式に辞任した。マクロン大統領は、数日以内に新たな首相を任命するとしている。新たに指名される首相は内閣を組み、分裂状態にある下院で予算案の可決を目指さなければならない。

  マクロン氏にとって、首相職を引き受ける人物を見つけること自体は難しくないが、議会内の各会派との接点を見いだせる人選となると、容易ではない。バイル氏は、新首相が決まるまで暫定首相として職務にとどまる。

マクロン大統領

Source: Bloomberg

  ジョージ・ワシントン大学でフランス研究を専門とするキャスリン・クレッピンガー教授は、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで「一体どの政党から人を登用できるというのか。同じことの繰り返しになると懸念している」と述べた。

  フランス債は9日の債券市場で上昇し、10年債利回りは3.47%となった。フランス株の代表的な指標CAC40指数は、現地時間午後3時45分時点で0.2%高だった。

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後任候補

  次期首相は、過去2年足らずで5人目となる。フランスの政治が修復困難な分裂状態にあることを反映している。  

  フランスメディアで後任候補として取り沙汰されている人物の多くは、バイル政権の閣僚で、首相交代後も中道派以外の政党への支持拡大には限界がある。

  候補には、前回の内閣改造時にも有力視されたルコルニュ国防相や、ヴォートラン労働・保健・連帯・家族相が含まれる。2025年予算案の可決に向けて社会党との橋渡し役を担ったロンバール経済・財務相の名前も挙がっている。

  マクロン氏周辺以外では、社会党党首のオリビエ・フォール氏が首相就任に意欲を示している。オランド社会党政権下で首相を務めたベルナール・カズヌーブ氏や、現在の会計検査院トップのピエール・モスコヴィシ氏の名も上がっている。

  いずれの政治家も打開策とならない場合、マクロン大統領は、純粋な実務家とみられる人物を首相に据える可能性もあるが、政治が機能不全に陥ったことを事実上認める格好となる。

French Government on Verge of Collapse Over Budget

不信任投票前に国民議会で演説するバイル首相(9月8日)

Photographer: Nathan Laine/Bloomberg

  不信任決議の可決を受け、社会党は即座に政権運営への意欲を示した。フォール氏はTF1テレビの番組で「左派が再びこの国を率いる時が来た。過去8年間に実施されてきた政策とは決別すべきだ」とマクロン政権の路線を批判した。

  一方、フランス2テレビでは、退任予定の内務相で、中道右派・共和党を率いるブリュノ・ルタイヨー氏が、社会党首相による政権には参加しないと明言した。同じ番組で、極左「不屈のフランス」を率いるジャンリュック・メランション氏も、フォール氏が率いる政権なら支持しない考えを示した。

  極右・国民連合(RN)のバルデラ党首は、9日のRTLラジオの番組で「われわれにとっては、解散総選挙しかない。マクロン氏が指名するどんな首相も、失脚することになる」とけん制した。

財政赤字

  バイル氏は、提案する予算案への支持を得るべく、信任投票を呼びかけ、敗れた。同氏は26年の財政赤字を今年の見積もりの5.4%から4.6%に縮小させることを目指し、総額440億ユーロ(約7兆6000億円)規模の歳出削減・増税を提案していた。コスト削減のため、祝日2日の削減も呼びかけ、反発を呼んだ。

  フランスはユーロ圏で最大の財政赤字を抱えており、バイル氏によると、債務は1秒あたり5000ユーロのペースで増加している。また、債務の利払い費用が来年には750億ユーロに達するという。

  フランスでは労働組合のストライキが18日に予定されており、マクロン氏にそれまでに新政権を発足させるよう、圧力となっている。別のの抗議活動も10日に計画されている。

  フィッチ・レーティングスは12日、フランスの信用力評価を更新する予定だ。

原題:France’s Premier Resigns as Macron Considers Replacement (1)(抜粋)

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