こうした成果や最近の進展を踏まえると、2027年までにBCIシステムの少なくとも1つは中国で承認される可能性が高いとペンは話す。

北京にある北京脳科学研究所(CIBR)の所長のミンミン・ルオも、新たな政策文書で掲げられた目標に向けて中国の技術開発が順調に進んでいるとの見方に同意している。「これは基本的に技術的なプロジェクトであり、目標もそれほど野心的なものではありません。すでに多くの人が取り組んでいます」と語る。

ルオはCIBRから派生したNeuCyber NeuroTechの主任研究者も務めている。同社は「Beinao-1」というコインほどの大きさの脳チップを開発し、これまでに5人の患者に埋め込んだ。「臨床試験で、優れた安全性と安定性を確認しています」と語る。

このチップの埋め込みを受けたまひのある患者は、コンピューターのカーソルを動かしたり、スマートフォンのアプリを操作したりできるようになったとルオは話す。チームは8月末までに6人目の患者にインプラントを埋め込む予定である。

「中国にはBCIによる補助技術に対し、非常に大きな需要があると考えています」とルオは言う。同国には、補助やリハビリでBCIの恩恵を受けられる患者が少なくとも100万〜200万人いると推定されている。

広がる用途

政策文書はこうした用途以外の医療分野での応用にも言及している。BCIを使って脳活動をリアルタイムでモニタリングおよび解析することで、特定の脳疾患の予防やリスクの低減に役立てられる可能性があるというのだ。また、消費者向けの利用例として、運転手の注意力を監視する用途も挙げられている。文書によると、ウェアラブル型BCIは眠気や集中力の低下、反応の遅れを検出し、警告を発することで交通事故のリスクを減らせるという。

「非侵襲型のBCI製品は、中国で市場の大きな追い風を受けるでしょう。中国は世界最大の消費者向け電化製品の製造国なのですから」とペンは話す。

米国のEmotivやNeurableといった企業は、脳波(EEG)を頭皮から読みとる消費者向けウェアラブル機器の販売を進めている。しかし、こうしたデバイスはまだ高価であり、広く普及するには至っていない。

中国の政策文書は、非埋め込み型デバイスの量産も推進している。こうしたデバイスは額や頭部、耳に装着するタイプのほか、イヤホン型、ヘルメット型、メガネ型、ヘッドフォン型など多様な形態が想定されている。

さらに、危険物の取り扱いや原子力、鉱業、電力といった特定の業界で安全管理のためにBCIを試験的に導入することも提案されている。文書によると、低酸素状態や中毒、失神といった職場での危険に対して、BCIが早期に警告を出せる可能性があるという。

新たな政策指針によりBCI分野での米中の競争が強まるなかでも、ペンは起業家同士が国を超えて協力する余地はあると考えている。「社会全体として互いに協力し、患者のためのものを構築できると思います。患者はよりよい生活を送るために、この技術を切実に必要としているのです」と話す。「地政学的な問題にはかかわりたくありません。患者にとって本当に役立つものをつくりたいだけなのです」

(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma, edited by Mamiko nakano)

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