インターネットイニシアティブ(IIJ)は9月5日、ウクライナのインフラ復興支援事業として、マイクロデータセンター(MDC)を提供すると発表した。4台を現地インフラ事業者に導入する。
屋外設置タイプ「DX edge Hut」
屋内設置タイプ「DX edge Pro」
今回の復興支援事業は、国際協力機構(JICA)が推進する「ウクライナ国復興に向けた民間セクター参画促進プロジェクト(ファスト・トラック制度適用案件)」の一環として実施するもの。
5月より開始された実証事業の業務として、2025年度中にウクライナの主要インフラ事業者2社へ、MDCを合計4台提供する。MDCは現地通信事業者および電力インフラ事業者に提供され、それぞれデータセンターのバックアップや変電所の設備監視などに活用される予定だ。
MDCは、サーバー、電源、空調、無停電電源装置(UPS)など、データセンターに必要な設備・機能を備え、屋内・屋外いずれの利用にも対応した、高さ約1~2mの小型サイズが特徴。可搬性に優れ、短期間で導入でき、また遠隔操作にも対応しているため、人の立ち入りが難しい環境でも運用管理が可能だ。
ウクライナ国内のITインフラは物理的な破壊やサイバー攻撃などの深刻な被害を受けており、社会インフラとして通信・IT設備の強靭(きょうじん)化と分散化が喫緊の課題となっている。戦争継続中ながらも同時に復興が進められており、ITインフラの再構築の需要が急速に高まっている状況だ。
IIJでは、JICAのウクライナ国復興に向けた民間セクター参画促進プロジェクトに加わり、2024年度はウクライナ国内における小型データセンターのニーズについて調査を実施。分散配置やインフラ再構築、現地パートナー企業との協業体制やビジネスモデル構築の可能性などを検討してきた。その結果、通信・ITおよび電力などの重要インフラのバックアップや、戦争激化をうけての設備移設、新設が困難なビル型データセンターの代替などの目的において、MDCの有効性を確認できたという。
今回の実証事業では、MDCをウクライナ国内の主要インフラ事業者に導入し、実運用環境下での性能検証と市場性を確認する。通信事業者の2都市の拠点に、それぞれ1台「DX edge Pro」を提供。地理的冗長性を確保したバックアップシステムとして運用し、製品評価を実施する。加えて、電力インフラ事業者の1拠点に2台「DX edge Hut」を提供し、屋外に設置。変電所の運用監視用途で利用し、ちりや風雨などの環境下での耐久性や稼働の安定性を検証する計画だ。
今後は、MDC提供先事業者からのフィードバックなどを基に、2026年度以降、MDCの市場性とビジネススキームをより詳細に検討し、現地でのMDCならびにITサービス・ソリューションによるビジネス展開を進めていく。
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