ドイツ国内でも問題視されているコスト高

かつては理想郷のように伝えられることが多かったドイツだが、現在、深刻な構造不況の真っただ中にある。その主因の一つが、国際競争力の急速な低下だ。8月25日、ケルンのシンクタンクであるドイツ経済研究所(IW)が、ドイツの製造業の労働コストは、他の先進国と比べて2割は高いという、非常に興味深いレポートを公表した。


具体的には、ドイツの製造業の2024年時点における単位労働コスト(雇用者報酬を実質GDPで除したもの)は、先進27カ国の平均値より22%高いというものだ。またドイツよりも単位労働コストが高かった国は、27カ国のうち、ラトビアとエストニア、クロアチアの3カ国だけだった。ちなみに日本は22番目で、米国は25番目だ(図表1)。


【図表】先進27カ国の単位労働コストの比較(2024年)
出所=Schröder, Christoph (2025) “Hohe Arbeitskosten: Deutsche Industrie 22 Prozent teurer als ausländische Konkurrenz,” IW-Trends, 2/2025.


ここで、この10年のドイツの単位労働コストの推移(図表2)を確認してみたい。ドイツの単位労働コストは、コロナショック前の時点でユーロ圏全体の単位労働コストの伸びを上回っていた。このことはつまり、ドイツがそれだけ雇用者報酬を増やしてきた、言い換えれば、ユーロ圏の他の国以上に労働分配を強めてきたことを意味する。


【図表】ドイツの単位労働コストの推移

出所=ユーロスタット



例えばドイツは、2015年に長年の争点だった最低賃金制度を導入した。当時の第三次アンゲラ・メルケル政権は、メルケル首相を擁する中道右派の与党・キリスト教民主同盟(CDU)と同社会同盟(CSD)、そして中道左派の社会民主党(SPD)の大連立内閣だった。この最低賃金制度の導入はSPDの肝煎りだったことで知られる。


WACOCA: People, Life, Style.

Exit mobile version