東京では8月、最高気温35度以上の猛暑日を18日観測した(写真:つのだよしお/アフロ)

(太田 和彦:南山大学総合政策学部准教授)

安住アナの発言から考える都市と酷暑

 TBSアナウンサーの安住紳一郎氏が8月3日放送のラジオ番組「安住紳一郎の日曜天国」で、「むちゃなこと言ってる」と断りつつも「私が都知事になったら、湾岸の高層マンションは全部解体して風の通り道をつくる」「港区に田んぼを作る」と発言し、反響を呼んだ1。

 安住氏の発言は突飛に聞こえるかもしれない。が、東京都に「風の道」を作ること自体は実はヒートアイランドを緩和するために以前から構想されてきた(もちろん、「湾岸の高層マンションを全部解体」するわけではない)。

 20年近くも前になる2008年、東京都は「環境基本計画」の中で、風の道の形成などで熱環境を改善する目標を掲げている。2010年代には国総研・国交省が「風の道」を活用した都市づくりガイドを整備している2。

 それではなぜ、東京の湾岸には高層ビルが林立しているのか。これは、「風の道」が議論されはじめたさらに20年前、1980年代に臨海副都心の開発がはじまったことによる。ヒートアイランドを緩和する東京湾からの海風の冷却効果は、この湾岸の高層ビル群に阻まれ都心まで届きにくくなった3。高層ビルを「全部解体」したくなる苛立ちの由縁である。

 では、湾岸の高層ビルをなくしてしまえば、沿岸部での昼間の気温低下が見込めるのだろうか。都心では一定の効果が認められるかもしれない。しかし、内陸にいくほどその効果は弱まる。

 気象庁のデータによれば、東京の年平均気温は過去100年で+3.4℃上昇した。これは日本全体の約+1.4℃よりかなり大きい。夏に限って言えば、2005年7月の東京の最高気温は月平均29.1℃だったのに対し、2025年7月の最高気温の平均は33.2℃。

 2025年8月5日には、青梅で40.3℃、府中で40.0℃を観測するなど、都心より西に位置する多摩地区においても危険な暑さが続いた。湾岸の高層ビルをなくしても、多摩地域のこれらの酷暑は和らがないだろう4。

安住アナのラジオが始まった2005年と今年の8月の暑さ(東京)の変化(気象庁データよりJBpress編集部作成)

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※2025年8月の詳しい気温データ(東京)は、最終ページのグラフ・表をご覧ください。

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