災害歴史遺産の記憶

2025/08/26 19:55

大暴風で倒れた楠を起こしたと語り継がれる木起し地蔵=佐賀市本庄町

木起し地蔵の本堂=佐賀市本庄町

 佐賀市本庄町鹿子に、大きなクスノキの横に地蔵菩薩(ぼさつ)がひっそりとまつられている。「木起(きおこ)し地蔵」と呼ばれ、江戸時代の天保年間(1830~43年)ごろの大暴風にまつわる逸話が、本庄町の歴史をまとめた「本荘の歴史」に記されている。

 同書によると、強い台風で地蔵のそばのクスノキが東の道に倒れそうだった。南は有明海の海岸、北は本庄村正里へ通じる重要な道で、住民が集まって長老を中心に話し合ったが、クスノキが大きいあまり処置に困ったまま夜を迎えた。夜通し「ヨイサー、ヨイサー」とかけ声が聞こえ、朝になるとクスノキが立派に立ち上がっていた。住民は根元の地蔵が起こしてくれたと感謝し、本堂を造った。

 地元の上飯盛地区で老人クラブの会長を務める石井智俊さん(83)は、依頼があれば「木起し地蔵」の逸話を紹介する活動をしている。定期的にお参りや清掃、お供え物をする住民もいるという。

 石井さんは「地蔵を知る人は少ないが、地元のことに興味を持ってもらえたら」と話す。

 地蔵菩薩が台風で倒れそうになったクスノキを起こして元の姿にしたという逸話は、佐賀市高木瀬町長瀬の平尾天満神社の「木起こし地蔵」でも語り継がれている。

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