2025年8月25日発売のForbes JAPAN10月号は「30 UNDER 30」特集。30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで『Forbes JAPAN』では18年より開催し、7年間で総計300人を選出してきた。今年も4つのカテゴリから30人の受賞者を選出。
SCIENCE & SOCIAL部門の受賞者のひとりが、ナラヤン・ラル・ガルジャールだ。干ばつで苦しむ故郷を救うべく、沖縄発・越境インパクトスタートアップを率いるインド人起業家として、気候変動問題の解決に挑んでいる。
気候変動がもたらす深刻な問題のひとつが干ばつだ。国連食糧農業機関(FAO)の報告書(2021)によると、1983~2009年の干ばつによる農作物収量損失は累積1660億ドル。このままでは世界は将来、食糧危機に陥るおそれがある。
解決策のひとつとして期待されているのが、越境スタートアップのEFポリマーが開発した超吸水性ポリマーだ。同社のポリマーは自重の50倍の水を吸収し、土に混ぜると水分を長期にわたって保つことができる。100%オーガニックで土壌に悪影響を与えないことも特徴のひとつだ。
創業者のナラヤン・ラル・ガルジャールが開発に着手したのは必然だった。生まれたのはインド北西部ラジャスタン州の人口300人の村。一家は自給自足で生活していたが、20日以上雨が降らずにトウモロコシが枯れた。科学好きの高校生だったナラヤンは、父から「勉強していることを生かして助けてくれ」と請われた。
「農地を保水する手段としてはマルチングやスプリンクラー、点滴灌漑が一般的です。しかし農村の所得水準では初期投資が難しい。また、石油由来のポリマー製品も市場に出回っていましたが、サンプルを取り寄せて実験しようとしたら、手袋で肌を守らなくてはいけなかった。それを土のなかに入れるなんて信じられなくて……」
開発ヒントは「母なる自然」
安価かつサステナブルなやり方で土壌の水分をコントロールできないか。そのとき頭に浮かんだのは、「Mother nature has a solution to every problem」(母なる自然はあらゆる問題の解決策をもっている)という考え方だ。
「私は科学が好きですが、科学は自然の仕組みを応用したもの。例えば飛行機が飛ぶのも、飛ぶ鳥を研究するところから始まっています。水問題も同じ。森は人が肥料を与えなくても自然に育ちます。そこにヒントがあると考えて、自然由来の素材を使って実験を始めました」
世界を変えうる30歳未満にフォーカスする企画「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」、8年目となる今年は30人を選出。これからの未来をつくる彼ら・彼女らが描く「希望」と「新しい未来」へ、ようこそ!
【30 UNDER 30 特集号が現在発売中 / 受賞者一覧を特設サイトにて公開中】
WACOCA: People, Life, Style.