名前
松原茉以
出身校
上智大学法学部国際関係法学科知的財産権専攻
現在の所属先
フランス共和国弁護士
McDermott Will & Emery法律事務所(パリオフィス)AI, Tech & Dataチーム所属
EUデジタル法を専門とし、主に多国籍企業のデータプライバシーやサイバーセキュリティ対応を担当。
留学先
パリ第1パンテオン・ソルボンヌ大学 法科大学院
Master 1 ビジネス法
Master 2 電子商取引およびデジタル経済法
狭き門をくぐった後もレベルの高い学生との競争が続きます。学生の大半がフランス人で、授業では専門用語も飛び交うため、高度な語学力が必要。就職活動では極めて高く評価されます。
留学先の都市と雰囲気
パリ
何でもそろっているうえに、食事がおいしく、極めて暮らしやすい。
研究テーマ
EU一般データ保護規則(通称GDPR) におけるデータの国際移転
GDPRはデータプライバシーの分野において世界で最も厳しいと言われている法律。日本はこの分野で比較的遅れを取っているため、研究テーマとして選択。中でも、卒業後のキャリアに生かせるようEU域外への個人データの国際移転を研究。
住居費(月額)
1100ユーロ(2015年当時)
学生は住宅補助金が出ますが、申請をしてから実際に給付されるまでに時間を要する可能性があるので注意が必要。
生活費(月額)
800ユーロ(2015年当時)
外食は東京より高いですが、マルシェ(市場)では新鮮でおいしい食材を手ごろな価格で購入できます。暖房がセントラルヒーティングの場合は、冬でも光熱費がかさむことはありません。
留学期間
3年(フランス政府奨学金受給期間:1年)
留学に至るまでの略歴と現在
上智大学法学部国際関係法学科在籍中に1年間の交換留学を経験し、一度は日本に帰国しましたが、1年後に再びフランスの大学院で法律を学ぶために渡仏しました。以来ずっとパリを拠点に、現在はフランス共和国弁護士として仕事をしています。
2015年9月、フランス政府給費留学生としてパリ第1大学法科大学院に入学しました。この大学院時代が人生で最も勉強が大変な時期だったと思います。当時はMaster 1からMaster 2への進級が非常に難しく、他の大学院含め受験をし直さなければなりませんでした(今は制度が変わったようです)。進級のためにはMaster 1で好成績を取ることだけでなく、インターンシップ経験など履歴書上で差別化を図ることが必要でした。Master 2に出願する際、インターネットすらない時代に作られた法律を現代にどのように当てはめるべきかという興味深いカリキュラムに惹かれ、デジタル法を学ぶ専攻を受験しました。当時、世界が注目していた欧州の個人データに関する規則(GDPR)の施行に先駆け、デジタル社会における法律全般を専門的に学ぶことができたおかげで、卒業と同時に大手法律事務所のMcDermott Will & EmeryのAI, Tech & Dataチームに就職することができました。
入所して間もなく、とある日本の自動車メーカーのGDPR対応のプロジェクトを任せてもらえることになり、4年半ほど日本とフランスを往復する生活を送っていました。
元々は弁護士資格を取ることは日仏問わず一切考えていませんでしたが、パリ留学のおかげで出会えた多くの優秀な人たちに背中を押してもらい、働きながらフランスの司法試験にチャレンジすることにしました。受験前は仕事をしながら司法試験対策の予備校に通い、司法試験合格後は、毎晩18時~23時まで弁護士養成学校に通っていました。仕事との両立は体力勝負でした。
無事にパリ弁護士会に登録した今、多国籍企業のデータプライバシーやサイバーセキュリティ案件を専門として日々経験を積んでいます。
留学先探し
高校1年生の時にフランス人留学生と仲良くなり、16歳で単独で渡仏し、南仏にある友人の家でクリスマスを過ごしました。帰国前にパリのオペラ座(ガルニエ宮)前で行われていた移民問題に関するデモを目の当たりにし、フランスの移民問題に興味を持ち始めました。今考えると、それがフランスに興味を持ったきっかけでした。
上智大学法学部在籍中に1年間、パリ政治学院(通称Sciences Po)に留学し、Longchamp本社の知的財産権(日本での専攻科目)を扱う部署でインターンシップを経験しました。それをきっかけに、将来フランスで働いてみたいと考えるようになり、フランスの大学院へ進学することを決めました。
フランス政府奨学金への応募から試験、合格まで
自分のやる気を両親や周りのサポートしてくれる人たちに示すためにフランス政府奨学金の受験を決心しました。
合格が決まった後、試験の面接官を担当してくださった方(フランスの弁護士)にたくさんサポートしていただいたことを今も鮮明に覚えています。
フランス政府奨学金留学生になると先輩方とのつながりが持てます。留学後のキャリアについて多くのアドバイスをもらうことができるのも大きなメリットのひとつだと思います。
語学
私は留学前にDALF C2を取得しました。それでも大学院の講義についていくのは難しく、授業の勉強の合間を使って、内容をすでに把握しているドラマや映画をフランス語音声・フランス語字幕で見ていました。フランス語を実際に聞く・話す機会を多く持つことが、レベルアップの秘訣だと思います。
留学準備
カリキュラムや指導教官を決めるにあたって、疑問などがあれば積極的に直接連絡をして質問をするとよいと思います。私はフランス政府奨学金の出願書類の準備の際にも、候補の大学の教授に質問しながら書類を作成しました。
パリでは日本食材の多くは調達ができますが、どうしても値段は高くなってしまいます。よく使うものは日本から持参するとよいと思います。個人的には食品用ラップフィルムは絶対に日本のものが使いやすいです。
フランスでの生活
初めてフランスに留学した際は、これが人生で最初で最後のフランス生活だと思っていましたが、気がつけば在仏10年になります。日本ではあり得ないようなことがフランスでは当たり前だったり、その逆も当然あるので、大変な思いをすることもあります。フランスは良くも悪くもマニュアルどおりにいかないことがあるので、例えば滞在許可証の更新の際には、必須以外の書類を求められることが起きたりします。残念ながら手続き関係は時間がかかるケースが多いので、少しでもスムーズに進めるために、書類はリストに載っていないものも含め、考えうるものすべてを準備することをお勧めします。
今後のキャリア
留学後、パリで就職して今年で6年半になります。弁護士としての現在の仕事には満足していますし、日々やりがいも感じています。幸い、現在の事務所は日本企業のクライアントも多いので、フランスで仕事をしつつ日本への出張の機会もあり、フランス政府奨学金に出願した当時の希望どおり、「日仏の橋渡し」となる役割を果たせていると自負しています。
フランスの日本人弁護士として、自分にとって何ができるかを課題として、目の前にあるチャンスを掴んでいきたいと思っています。
フランス留学を目指している人、フランス政府奨学金への応募を考えている人たちへのメッセージ
私にとってフランス留学で得た一番の財産は、日本にいたら出会えなかったかもしれない他業種の人たちとの出会いです。さまざまな分野で活躍する人たちとの出会いがなければ、フランスで弁護士資格を取ってみようと考えることすらなかったと思います。留学前も留学中も、投げ出したくなるほど大変な思いをすることがあると思いますが、苦労があるからこそ、その先には大きな学びや成長があると信じて、ぜひ一歩踏み出してみてください。
フランスは大学院・研究留学を応援します
フランス政府奨学金は、修士・博士課程の学生およびポスドク研究員のフランス留学を支援しています。
応募期間は毎年9月20日~11月20日です。
2025年9月に募集開始の2026年度募集要項は2025年8月の公開を予定しています。
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