台湾の越境資本動向が異例の動きを見せている。域内への資金環流と対外投資がいずれも記録的な水準となっており、台湾ドルのボラティリティー拡大を招くとの懸念も高まっている。台湾では為替の安定が輸出拡大や台湾積体電路製造(TSMC)など世界的な半導体メーカーの競争力向上に寄与してきた。

  台湾の中央銀行が20日に発表した4-6月(第2四半期)の国際収支データによれば、台湾の居住者による外国証券の売却額が大きく膨らんだ。その純減額は70億ドル(約1兆円)に達し、2008年の金融危機以降で最大となった。

   一方で、外国人投資家の台湾資産保有と台湾企業の対外投資も急増。こうしたいびつな資本移動は、為替相場のボラティリティーを高める可能性があり、トランプ米大統領の関税政策の影響が及ぶ台湾経済に打撃を与える恐れもある。 

Rare Repatriation | Resident outbound investment lowest since 2008

 

 

  オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のアジア調査責任者、クーン・ゴー氏は「一部の資金が台湾に戻ってきていることを示している。これは極めて異例で、通常は世界的な金融危機など市場の変動が極端なときにしか起きない」と指摘。米関税を巡る不透明感がもたらす市場の激しい相場変動や台湾ドル急騰が台湾への資本流入をもたらした可能性があるとも述べた。

Record High | Foreign investor net bought Taiwan stock and funds in 2Q

 

 

  台湾ドルは5月、2日間として1980年代以来最大の上昇を記録。台湾当局が米国との通商交渉で合意に至るために通貨高を容認するとの観測が広がり、輸出企業が米ドル売りに動いたことが要因だった。

  外国人投資家による台湾資産への投資は、4-6月に141億ドルの純増と、過去最大の伸びとなった。台湾株が買われたことが大きな要因で、台湾株の指標、加権指数は四半期で7.5%上昇。今週は過去最高値を更新した。  

Double Record | Taiwan current account pushed to record high from goods balance

 

 

  台湾の経常黒字は4-6月に362億3000万ドルと過去最大を記録。財の貿易黒字も記録を更新した。中銀によれば、人工知能(AI)などへの需要の高まりや海外メーカーによる先行仕入れが主因だったという。

  ING銀行の宋林チーフエコノミスト(大中華圏担当)は「第3四半期(7-9月)の輸出は7月に好調な滑り出しを見せたが、8月はやや冷え込みの兆しがある。関税引き上げが輸出の勢いをそぐようであれば、経常収支にも影響が及ぶだろう」との見方を示した。

Outbound Investment Surge | Affected by overseas investments by TSMC and other tech manufacturers

 

 

  台湾企業による対外投資も4-6月に190億ドル増え、記録的な伸びとなった。中銀によると、TSMCがグローバルなサプライチェーンの変化に対応する形で米国や他の地域への直接投資を拡大したことなどが背景にある。

原題:Taiwan’s Whipsawing Capital Flows Put Currency Stability at Risk(抜粋)

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