岡山学芸館を相手に6回途中1安打無失点の快投、打っても4打数3安打3打点

 今大会は2年生投手にプロも注目する大器が多いが、その中でもピカイチの存在だ。山梨学院のエースで身長194センチ、体重100キロの“メジャーサイズ”を誇る菰田陽生(こもだ・はるき)投手は16日、全国高校野球選手権大会・3回戦の岡山学芸館戦に先発し5回2/3、1安打無失点の快投を演じた。打っても4打数3安打3打点。チームは14-0と大勝を収め、選手権では初のベスト8入りを果たした(春の選抜大会では2023年に優勝)。

元プロら70人以上が参戦 現場指導者の支持多数 “YouTube”にない野球指導動画が「無料で250本超」見放題

 試合終了後、194センチの菰田がお立ち台に上がると、本当に会見場の天井へ頭が付いてしまいそうに見えた。「実は甲子園のベンチは天井が低くて、頭が当たっちゃいました。山梨県大会の球場はそこまで低くなかったのですが……」と苦笑した。

 1-0とリードして迎えた3回の守備。先頭の7番・森下(1年)を空振り三振に仕留めた外角のストレートが150キロを計測すると、3万人の観客がどよめいた。今春の選抜大会で計測した自己最速の152キロには及ばなかったものの、「ああいう歓声を聞くと、甲子園だなあ……と思います」と“聖地”を実感した。

 打っても、4回に中犠飛を打ち上げてチームに2点目をもたらし、さらに5回2死二塁で痛烈に左中間を破ると、50メートル走6秒4の俊足で三塁まで陥れた。投げるだけでなく、打撃も走塁も決しておろそかにはしない。二刀流&盗塁王のドジャース・大谷翔平投手に憧れ、「大谷選手に少しでも近づけるように毎日頑張っている」からだ。この日は「甲子園という舞台で自分のプレースタイルを発揮できてよかったです」と満足そうな笑みを浮かべた。

 父・英典さんは愛知・星城高時代に投手、外野手、一塁手として活躍し、母・理恵さんも高校時代はバレーボールの強豪校でプレー。兄・朝陽(あさひ)さんは現在、上武大2年で「1番・中堅」のレギュラーポジションをつかみ、50メートル走5秒7の快足を誇るというスポーツ一家である。ただ、身長は英典さんが175センチ、理恵さんが167センチ、朝陽さんも174センチで、英典さんは「陽生は“突然変異”です。生まれた時から手足が長くて“投手向き”だなと思っていました」と証言する。

19日の準々決勝では昨夏覇者・京都国際と対戦することが決定

 父・英典さんは高校卒業後、「趣味のサーフィンを思う存分やりたくて」、サーフポイントとして知られる千葉県御宿町に住むようになり、看護師の仕事を得て、介護福祉士の理恵さんともここで知り合い結婚した。

 2人の息子が相次いで中学時代に千葉県内の強豪「千葉西シニア」に所属すると、毎週土・日には午前5時前に軽バンを運転して御宿を出発し、片道約1時間半かけて佐倉市の練習場まで送り迎えした。運転中も息子たちには後部座席に設置したベッドで睡眠を取らせ、自分は練習中に仮眠を取った。土・日に休みを取れるように、職場も替えたという。

 小学校卒業時には既に180センチ弱の破格の長身だった菰田。英典さんは「体のバランスが悪くならないように、小・中学生時代を通じてラダー(はしご状の器具)を使った体幹トレーニングをやらせました」と明かすが、父と一緒に幼い頃から興じたサーフィンも、体幹強化に役立った可能性がある。

 英典さんは「(菰田が)将来プロになって、それを見に行けたら嬉しいですね」と目を細める。現時点で大いに現実味を帯びているといえる。そして菰田も「お父さんには普段からバッティングを教えてもらっているので、打つことで感謝の気持ちを伝えたいです」と泣かせるセリフを口にした。

 山梨学院は19日の準々決勝では、昨夏優勝チームで連覇を狙う京都国際と対戦することが決まった。家族ぐるみの夢はまだまだ続いていく。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)


WACOCA: People, Life, Style.

Exit mobile version