レッドブル=ボーラ=ハングスローエに所属するフロリアン・リポヴィッツは、2025年7月5日に開幕したツール・ド・フランス2025でこの伝統のステージレースデビューを飾ったばかりだが、現在24歳のこのドイツ人ライダーはすでに今回のツール・ド・フランスで最もエキサイティングなニュータレントのひとりとされている。

バイクに乗っていないときは物静かで謙虚なリポヴィッツは、いざバイクに乗るとまるでホリデーライドのように山岳を軽々とクライムする。スターライダーのプリモシュ・ログリッチでさえ、「とにかく簡単に見える」と語る。

ツール出場4回を誇るリック・ツァベルもリポヴィッツに期待を寄せる

ツール出場4回を誇るリック・ツァベルもリポヴィッツに期待を寄せる

© Fellusch/Red Bull Content Pool

リポヴィッツのツールでの表彰台獲得も夢ではありません

リック・ツァペル(元ライダー / ドイツ人ロードレース専門家)

ここ最近、この元バイアスロン選手の注目度が上昇している。彼のことを話題にしているのはファンたちだけではない。ドイツ人のロードレース専門家で、2017年から2022年にかけてカチューシャ・アルペシンやイスラエル・スタートアップネイションからツール・ド・フランスに参戦した元プロライダーでもあるリック・ツァベルは次のように語る。

「リポのような個人総合トップ5どころか表彰台フィニッシュも狙えるドイツ人ライダーがいるのはとても嬉しいことです」

ツールで戦うための条件を知っている人物からこのように評価されるのは、ただごとではない。

レッドブル=ボーラ=ハングスローエでツール初参戦を果たしたリポヴィッツの個人総合トップ5入りが夢ではない4つの理由を解説しよう:

01

ブエルタ7位入賞&スプリングシーズンも好調

リポヴィッツが最初に注目を浴びたのは、最も重要かつ過酷なロードレースのひとつである2024年のブエルタ・ア・エスパーニャでの個人総合7位だった。

2024年のブエルタでは個人総合7位に入賞したリポヴィッツ

2024年のブエルタでは個人総合7位に入賞したリポヴィッツ

© Kristof Ramon/Red Bull Content Pool

迎えた2025年春、彼はブエルタでのリザルトがまぐれではなかったことを証明した。リポヴィッツはシーズン序盤の重要レースであるパリ〜ニースで個人総合2位を記録し、チャレンジングなイツリア・バスク・カントリー(バスク一周)では表彰台から8秒差の4位でフィニッシュした。数日間のレースの中で、その差はまばたきよりも少ない。

さらに、多くの有力ライダーたちがツール・ド・フランスの前哨戦として位置付けているもうひとつのメジャーレース、クリテリウム・デュ・ドーフィネでもリポヴィッツは輝きを見せた。ドーフィネでの彼は、若手ライダー最上位となる個人総合トップ3入りを記録した。

これらすべての安定したパフォーマンスは、リポヴィッツが今年一番のビッグレースを絶好のコンディションで迎えていることを示している。

02

チームの切り札的位置づけ

ツール・ド・フランス開幕前、どのライダーがレッドブル=ボーラ=ハングスローエをリードするのかが大きな話題となっていた。レッドブル=ボーラ=ハングスローエはグランツール優勝5回を誇るプリモシュ・ログリッチをキャプテンに選び、ログリッチはチームメイトであるアレクサンドル・ウラソフのサポートを受けている。

ツール・ド・フランス用の新たなチームキットに身を包むリポヴィッツ

ツール・ド・フランス用の新たなチームキットに身を包むリポヴィッツ

© Maximilian Fries/Red Bull Content Pool

リポヴィッツに与えられているのは、“ジョーカー” の役割だ。他の役割より重要度は低いが、2週目を中心に大胆な逃げを打ってレースに大きなインパクトを与えられる自由が与えられている。

レッドブル=ボーラ=ハングスローエのスポーティングディレクターを務めるロルフ・アルダクは次のように語っていた。

「フロリアンはプリモシュ・ログリッチと並んでライディングすることになります。彼の役割は、ツール・ド・フランスが進んでいくうちに明らかになっていくはずです」

フロリアンの役割は、ツール・ド・フランスが進んでいくうちに明らかになっていくはずです

ロルフ・アルダク(レッドブル=ボーラ=ハングスローエ スポーティングディレクター)

03

ツールに向けて特別なトレーニングを積んだ

ツール・ド・フランス2025のルートをチェックした人なら、今年はオールラウンダータイプのライダーが有利なことを理解できているはずだ。特に、丘陵地帯の2ステージに渡って約27マイル(約43km)のタイムトライアルが行われるため、タデイ・ポガチャルやレムコ・エヴェネプールのようなビッグネームが優位とされる。では、リポヴィッツはどうだろう? それはまだ未知数だ。

チームキャプテンのプリモシュ・ログリッチと並走するリポヴィッツ

チームキャプテンのプリモシュ・ログリッチと並走するリポヴィッツ

© Maximilian Fries/Red Bull Content Pool

ツールを前に、リポヴィッツはタイムトライアルのスキル向上に力を注いだ。彼は、ライダーのエアロダイナミクスを向上するために設計されたケイツビー・トンネル(英国・ノーサンプトンシャー州)でトレーニングを行った最初のトッププロだ。

この結果、リポヴィッツはクリテリウム・デュ・ドーフィネでの長距離タイムトライアルで平均時速29.7マイル(約47.8km)をマークし、自身のハードワークが報われたことを示した。

04

ツール最難関クライムの一部を経験済みツール・ド・フランスに初参戦するライダーの多くが、苦い経験を通して学ぶ教訓がある。ジロ・デ・イタリアやブエルタのような他のグランツールを経験し、そこでたとえトップ10フィニッシュを飾ったとしても、世界で最も過酷なレースの完走を上回ることはできない。

では、リポヴィッツが他のツール初参戦ライダーと異なる点はどこなのだろう? すでに彼はツールでの最難関クライムや地形の一部に慣れ親しんでいるのだ。

2024年のブエルタから上り調子にあるリポヴィッツ

2024年のブエルタから上り調子にあるリポヴィッツ

© Kristof Ramon/Red Bull Content Pool

たとえば、今年のクリテリウム・デュ・ドーフィネにはコル・ド・ラ・マドレーヌ峠やクロワ・ド・フェール峠のような急峻な峠が登場したが、これらの峠はツール・ド・フランスのルートにも含まれており、ヴィフからコル・ド・ラ・ロズ峠を目指す重要な山岳ステージは特に厳しい。

獲得標高35,433フィート(約10,800m)に及ぶクライムを擁する最終3ステージをはじめとするレース全体の過酷さから、サイクリングファンはしばしばドーフィネを “ミニ・ツール・ド・フランス” と呼んでいる。そのため、このレースは、ツール・ド・フランス第12ステージから第14ステージの間にライダーたちが直面する過酷なピレネー山脈に向けてうってつけのウォーミングアップとなっている。

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