Microsoftが「Windows」ユーザー向けに段階的に提供している新機能「Recall」は、一部のブラウザーから歓迎されていないようだ。Braveは公式ブログで、Windows版のバージョン1.81以降では、Recallがユーザーのブラウジング活動を自動的にスクリーンショットする機能をブロックする方針を明らかにしている。
Braveは、「われわれはプライバシーを最大限に尊重するデフォルト設定を重視しており、ここでの問題(ユーザーの閲覧履歴全体)の重大性を考慮し、Braveの全てのタブでRecallを事前に無効化した」と述べている。また、「特に親密なパートナー間の暴力のような、非常にプライバシーに敏感なケースにおいて、ユーザーの閲覧履歴が永続的なデータベースに誤って保存されることは、悪用の温床になりかねない」と警鐘を鳴らしている。
この対策を実現するために、BraveはMicrosoft自身の技術を逆手に取っている。Recallの仕様では、プライベートブラウジングウィンドウはスクリーンショットの対象外とされているが、Braveはこの定義を拡張し、全てのタブを「プライベート」としてOSに認識させることで、Recallによる監視を自動的に回避している。Braveはこの巧妙な回避策について、GitHubページでさらに詳しく説明している。
BraveユーザーがRecallの有効化を希望する場合、ブラウザーの「設定」メニューから「プライバシーとセキュリティ」の項目へ進み、「Microsoft Recallをブロックする」スイッチをオフにすることで、この機能を有効にできる。
Recallは現在、「Copilot+PC」でのみ利用可能であり、4月からは「Windows Insider」向けにプレビュー版が提供されていた。Microsoftは米国時間7月22日、「Windows 11」のアップデートを通じて、Copilot+PCユーザー全体にRecallのプレビュー版を正式に展開した。
Recallは2024年5月に発表され、Windows上での活動を定期的にスナップショットとして記録し、それを高度な検索ツールとして活用することで、過去に行った作業や見た情報を素早く探し出せる。
しかし、Windows上で見たり行ったりした全てを記録するこのツールには、プライバシー上のリスクも伴う。Recallの仕組みを知ったWindowsユーザーの間では懸念の声が上がり、セキュリティ専門家の中には「プライバシーの悪夢」とまで呼ぶ声もあった。
こうした批判を受けて、Microsoftはこの1年間、Recallの調整に取り組み、ユーザーがより細かく設定を管理できるようにしてきた。また、同社はスナップショットが第三者や自社に共有されることはなく、AIの学習にも使用されないと説明している。さらに、スナップショットデータは暗号化されており、「Windows Hello」による認証を通じてユーザー本人のみがアクセスできる仕組みとなっている。
それでもなお、プライバシーに対する不安は根強く残っている。
BraveのソフトウェアエンジニアはGitHubページで、「RecallはBraveのプライバシー重視の理念に反するものであり、Brave上でのユーザーの行動をRecallが記録できないようにすべきだ」と述べている。
RecallをブロックしたのはBraveが初めてではない。5月には、メッセージングアプリ「Signal」もRecallがSignalのチャット画面をスクリーンショットするのを防ぐ措置を講じている。Signalのブロック機能もデフォルトで有効化されているが、無効化できるようになっている。ただし、設定変更にはやや手間がかかる。
BraveのチームはSignalの動きに触発されたと明かしているが、アプローチは少し異なる。SignalはRecallだけでなく、全てのスクリーンショットを無効化するフラグを使用しているため、他のキャプチャーソフトでも画面を撮影できなくなる。一方、Braveでは、Recallによるキャプチャーのみを防ぎ、他のスクリーンキャプチャーソフトを使えば画面を撮影できる。
提供:ZDNET
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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