米国との貿易交渉で合意が成立せず、8月1日から欧州連合(EU)の製品に30%の関税を賦課するとの脅しをトランプ大統領が実行に移す場合、EUも速やかに同率の関税を約1000億ユーロ(約17兆2000億円)相当の米国製品に課す計画だ。

  欧州委員会の報道官が23日、明らかにした。EUは第1弾の対抗措置の一部として、既に承認済みの210億ユーロ相当の米国製品に対する関税リストと、これまでに追加で提案された720億ユーロ相当の製品への関税案を統合し、1つのパッケージとしてまとめる。発動する場合でも7日以降になると、報道官は発表文で説明した。

  事情に詳しい関係者によると、この30%関税の対象となる製品には、ボーイングの航空機や米国製の自動車、バーボンなどが含まれる。米国による昨年のEU向け輸出は総額3350億ユーロだったため、3分の1近くが対象になる。

Employees work on Boeing 737 passenger jets at the company's factory in Renton, Washington, US.

旅客機を製造するボーイングの工場(米ワシントン州)

Photographer:Jason Redmond/AFP/Getty Images

  EUはこの関税の8月発効を準備しているが、発効されるのは貿易交渉で合意できず、同月の期限を過ぎて米国が関税を導入する場合だけだと、非公表の協議内容だとして匿名を要請した関係者はくぎを刺した。

  この発表後、ユーロはやや下げを拡大して一時0.3%安の1.1723ドルに下落。ドイツ債は下げを縮小した。

ドイツに対抗手段支持の用意

  貿易交渉を巡っては、米国の強硬な姿勢に対応し、ドイツをはじめEU側も態度を硬化。

  政府当局者が匿名を条件に語ったところによれば、合意不成立の場合には、EUの最も強力な通商手段である「反威圧措置(ACI)」の発動をドイツも支持する用意があるという。ACI発動にはEUの特定多数決の支持が必要で、発動されれば、米テクノロジー大手に対する新税や標的を絞った米国投資の抑制、米企業によるEU市場へのアクセス制限など広範な措置を打ち出すことが可能になる。

  ドイツのメルツ首相は22日、チェコのフィアラ首相との会談後にベルリンで記者団に対し、「米国との関税問題で、われわれは決定的な段階に近づいている。公平で信頼できる合意と低い関税が必要だ」と発言。「そのような合意がない場合、経済が不確実性に包まれるリスクを冒すことになる。われわれが実際に必要としているのは、その正反対であるにもかかわらずだ」と語った。

  欧州委員会は加盟国とACIについて協議したと、関係者は説明。一部に発動を推す声もあるが、大半は8月1日以降に状況がどうなるのか様子見を望んでいると、関係者は付け加えた。

  EU側の交渉を担当するシェフチョビッチ欧州委員(通商担当)は、23日午後にラトニック米商務長官と会談する。

  ベッセント米財務長官は23日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、合意にこぎ着けた日本のような、革新的な提案をEUはまだしてきていないと主張。「交渉はこれまでよりもうまく進んでいる」としつつ、「EUとはかなりの前進を遂げつつあると思うが、以前にも指摘した通り、EUには27カ国で足並みをそろえるという問題がある」と語った。

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動画:ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで話すベッセント米財務長官

Source: Bloomberg

原題:EU Readies €100 Billion No-Deal Plan to Match US 30% Tariff (2)、EU’s Sefcovic to Talk to Lutnick This Afternoon: Spokesperson(抜粋)

(第2、3段落に内容を加え、第5段落以降を付け加えます)

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