大阪・関西万博での未来体験を支える陰の立役者。「プライベート5G」が支えるリアルタイム遠隔操作技術

2025年4月から開催している2025年日本国際博覧会「大阪・関西万博(以下、万博)」は、日本と海外158の国や地域、7つの国際機関が参加しパビリオンの数は180に上ります。また、1日の平均来場者数は約10数万人、スタッフも約1.7万人に上り、AIをはじめとする最先端技術を使った未来の世界が提示されている会場では安定した通信環境が求められます。ソフトバンクは、6月17〜23日に「大阪ヘルスケアパビリオン」内の展示に通信環境を提供しました。展示の模様と現地のネットワーク設計について紹介します。

一歩先の未来の生活を体験。遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

一歩先の未来の生活を体験。遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

大阪ヘルスケアパビリオンの1階エントランスにあたる、吹き抜けのアトリウムを抜けた左手に位置する「リボーンチャレンジ」ゾーン。公益財団法人 大阪産業局などが企画運営し、優れた中小企業・スタートアップ400社以上が週替わりでテーマに基づき出展しています。

一歩先の未来の生活を体験。遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

一歩先の未来の生活を体験。遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

今回は「みんなで考える未来の街プロジェクト」というテーマで展示が行われ、一部の展示とスタッフの業務端末にソフトバンクの5G回線が活用されました。大阪産業局は、2020年に大阪・咲洲に開設した、5Gを活⽤する製品・サービスの開発を⽀援するためのオープンラボ施設「5G X LAB OSAKA」をソフトバンクなどと共同運営しています。

一歩先の未来の生活を体験。遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

一歩先の未来の生活を体験。遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

未来の街をイメージした会場内では、大阪産業局の公募で国内外から集まったスタートアップ12社が、体験型の展示をメインに、ヘルスケア、働き方、学び、コミュニケーションそれぞれの分野で構成されました。ARと歩行解析を掛け合わせユーザーに合わせた運動メニューを提案するブースや、AIと筋肉の電気信号で直感的に操作できる次世代ロボットハンドの体験ブースには長い列ができていました。

一歩先の未来の生活を体験。遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

一歩先の未来の生活を体験。遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

他にも、AIや音声解析、センサーなど最先端技術が組み込まれた展示が多く紹介され、どのブースでも来場者が興味深く説明に耳を傾ける姿や、熱心に質問する様子が見られました。

選択した漢字から生成AIがオリジナルの絵本を作るアプリ

選択した漢字から生成AIがオリジナルの絵本を作るアプリ

AI画像解析で歯の内部を3Dで可視化するアプリ

AI画像解析で歯の内部を3Dで可視化するアプリ

声や動作を感知し、機嫌が変化する赤ちゃん型介護ロボット

声や動作を感知し、機嫌が変化する赤ちゃん型介護ロボット

ハンズフリー型のAI通訳ソリューション

ハンズフリー型のAI通訳ソリューション

その中の一つ、建機の遠隔操縦で建設業界の人材不足などの社会課題解決を目指す「ORAM株式会社(以下、ORAM)」の展示ブースでは、万博会場から約5Km離れた「5G X LAB OSAKA」の操縦席から、デモ用建機を操作する様子を実演。ソフトバンクの法人向け5Gネットワークサービス「プライベート5G(専有型)」(以下、プライベート5G)を使うことで、低遅延での遠隔操縦を実現していました。

ソフトバンクのプライベート5Gは、ソフトバンクのモバイル通信ネットワークを使い、単一のネットワークリソースを用途に応じて仮想的にデータをスライス(=分割)して制御できる技術を持つ、安全でかつ品質の高いサービス。建機の遠隔制御、映像伝送など要件に応じて適切なスライスを選択することで、効率的にネットワークを利用できる。

一歩先の未来の生活を体験。AIや遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

目の前の建機が動くと、指をさしながら歓声をあげる子どもたちの姿も! モニターに映る操縦者からは、建機の運転席に設置されているカメラ映像が見えるため、説明スタッフと手を振り合ってリアルタイムで映像がつながっていることを分かりやすく説明していました。

一歩先の未来の生活を体験。AIや遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

プライベート5Gは、期間中の会場スタッフのべ70名の業務用スマホの通信回線でも使用。会場のWi-Fi回線は、混雑や展示物の通信状況によって影響を受ける場合がありますが、特定の目的や空間に限定して利用可能なプライベート5Gは、通信が安定しており発受信の多いスタッフ間でも連携がスムーズに行えたそうです。

一歩先の未来の生活を体験。AIや遠隔操作技術の展示を支えるネットワーク

コンパクトな端末を置くだけで実現できる安全・安定したプライベート5G通信環境

コンパクトな端末を置くだけで実現できる安全・安定したプライベート5G通信環境

今回の展示で使用されたプライベート5Gは、ソフトバンクの周波数帯を使って、企業や自治体などの敷地内に、必要な帯域、必要な容量で専用の5Gネットワークを構築する仕組みです。専用のルーター端末を用意するだけで、業務ネットワークに必要な通信品質を安定的に提供できます。

大阪万博 ORAM展示構成

ORAMの展示内容は、遠隔地から建機の操縦を行うため、リアルタイムでの動作や映像伝送が求められます。そこで、異なる用途に応じてネットワークリソースを仮想的に分割できるプライベート5Gの「スライシングオプション」が使われました。これにより、ネットワークを効率的に利用できるため、さらに品質の高いデータ送受信が可能となります。ORAMの展示とスタッフの業務端末には、それぞれ別のネットワークスライスが割り当てられるように構築されました。

プライベート5Gを産業に活用し、社会課題解決を

プライベート5Gを産業に活用し、社会課題解決を

万博パビリオン内の展示会場という特殊な環境下での、プライベート5Gによる通信の提供にはどのような背景や苦労があったのか構築に携わった担当者に聞きました。

岡田 和也(おかだ・かずや)

ソフトバンク株式会社 IoT&プラットフォーム本部

岡田 和也(おかだ・かずや)

2024年にソフトバンク株式会社に新卒入社。法人向けの5Gネットワークサービス「プライベート5G」のプロダクト担当として、プリセールスを入社当初から担当。また、5G利活用のさらなる普及を目的とした官民連携拠点「5G X LAB OSAKA」の運営も担当。

岡田 5Gの産業利用を推進している当社にとって、遠隔操縦と5Gの組み合わせは、未来の働き方を伝える上で重要な要素です。今回の万博で、産業向け通信における5Gの現実的なユースケースを一足早く体験いただけたことは、大変有意義であったと考えています。

プライベート5Gは、モバイル通信ネットワークを利用しているため、展示用のネットワーク構成を別の場所で事前にテストできるというメリットがあります。展示期間中には、展示エリアや内容の変更により構成を急きょ見直す必要が生じ、試行錯誤を重ねる場面もありましたが、ORAMのエンジニアの皆さまのご協力により調整を進めることができ、最終的には安定した通信品質を維持し、展示の成功に貢献することができました。一方で、会場のWi-Fi品質にあわせて展示内容を変更せざるを得なかった出展者もいたと聞いており、そうした中でORAMの技術力を発揮いただけたことをうれしく思います。

今回の経験を通じて、5Gのさらなる普及には、実際のユースケースを通じて課題を洗い出し、解決策を見出すことの重要性をあらためて実感する、貴重な機会となりました。

プライベート5Gの導入と活用について、ORAMと大阪産業局の担当者はそれぞれ次のようにコメントを寄せました。

野村 友梨氏

ORAM株式会社 代表取締役

野村 友梨氏

「プライベート5Gを活用した遠隔操縦デモは、1日あたり約1万人が来場し身動きが取れないほどの混雑の中でも、操作信号が途切れることなくスムーズに実施できました。今後はサービスプランのさらなる拡充により、社会実装の加速を期待しています。」

藤井 拓朗氏

公益財団法人 大阪産業局

クロステック推進部 テクノロジー・ビジネス創出・成長支援チーム リーダー

藤井 拓朗氏

「万博という貴重な機会でプライベート5Gの検証を実施し、その有用性を確認することができました。今回、展示と業務用の2つの場面で検証を実施しましたが、実践してみて分かることも多く、とても良い経験となりました。今後は、5G X LAB OSAKAを起点として、他のユースケース創出支援にも積極的に取り組んでいきたいです。」

未来社会を提示する大阪・関西万博の展示。その裏側では、混雑した会場でも安定した通信を実現するプライベート5Gによって、誰もが快適に未来を体験できる空間づくりに貢献していました。ソフトバンクはこれからも社会課題解決のため、5Gの産業利用に向けたさまざまなユースケースに挑戦していきます。

(掲載日:2025年7月22日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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