欧州連合(EU)が米国と交渉中の通商協定で、商用航空機を一部の関税から免除する方向で調整していることが、関係者の話でわかった。暫定合意に向け交渉が大詰めを迎える中、EUの交渉担当者らは、8月1日にも課される大型関税から、域内の主要産業を守ることに注力している。

  商用航空機への関税が免除されれば、エアバスにとって追い風となりそうだ。また、主にドイツの自動車メーカーを対象とした特例措置も盛り込まれる見通しで、BMWやメルセデス・ベンツグループなどが恩恵を受けることになる。蒸留酒も関税回避の可能性がある。

  一方で、イタリアのフェラーリのような自動車メーカーは恩恵を受けられない可能性がある。ブルームバーグは以前、特例措置が米国内に工場を持つ企業のみに適用される可能性があると報じた。

  関係者によると、今週も続く協議の中で、米国がEUに対し航空機や部品、蒸留酒にどのような関税免除を認めるかは、なお不透明なままだ。どの産業が関税免除の対象となるかは、主要加盟国の政治的影響力、EUの重要産業としての位置づけ、米国が自国の製造業保護に利害関係を持つかにかかっている。エアバスの場合は、これらすべてが関係している。

  JLSコンサルティングの航空業界アナリスト、ジョン・ストリックランド氏はインタビューで「エアバスは欧州の航空機製造業を象徴する存在だ」と語り、関税分が顧客に転嫁されれば、「需要が大きく落ち込み、エアバス全体の収益性にも深刻な打撃を与える可能性がある」と指摘した。

  関係者によると、EUと米国は現在、いわゆる「相殺メカニズム」と呼ばれる仕組みについても協議している。この仕組みが実現すれば、米国内で自動車を製造する欧州企業が、一定数の車両を関税なしで輸出できるようになる見通しだ。

  ドイツのメルツ首相は先月、一部の欧州自動車メーカーに関税緩和をもたらすこの「相殺ルール」の導入を支持する姿勢を示した。

  エアバスの株価は9日のパリ株式市場で一時1.5%上昇した。BMWもフランクフルト株式市場で一時2.1%上昇した。一方で、米国内に工場を持たないポルシェとフェラーリは、それぞれ一時1.7%、1%下落した。

原題:EU to Protect Airbus in US Trade Deal as Ferrari to Lose Out (1)(抜粋)

(詳細を加え更新します)

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