昨年、台北の大稲埕にオープンした人気のファインダイニング「盈科 EIKA」でオーナーシェフを務め、「台湾でしか食べられない日本料理」を提供するのが稗田良平だ。2014年に「祥雲 龍吟」の料理長に抜擢され、5年連続でミシュラン二つ星を獲得した風雲児としても知られる。自らの足で台湾中を巡り、地元の生産者と強い信頼関係を築くことで、新鮮で質の高い食材を入手する。
「大稲埕は台湾一早く発展した場所で、歴史の跡が色濃く残っています。バロック様式や台湾建築、洋館など伝統建築が点在し、文化が入り混じる感じが興味深いですね」と稗田シェフ。店は4階建てのシックなレンガ造りで、看板はない。店内には緑がふんだんに取り入れられ、ホテルのような優雅さがあり、日常とかけはなれた空間が広がる。店のデザインは稗田自らが担った。インテリアデザインから家具、食器のチョイスに至るまですべてに彼のセンスが光る。
食事前に心を静めてもらう茶室。Photo: Hedy Chang
もちろん、ダイニングの演出にも特別感が漂う。ゲストは入室後まず、1階の茶室でくつろぎ、2階のダイニングスペースに上がると存在感のあるオープンキッチンに出迎えられる。ライブ感があり、ワクワクした気分が高まる。稗田は、「キッチンと食卓の距離を近づけようと考えました。厨房作業の音や香り、色彩のすべてを融合させることで、ゲストにキッチンで食事している気分を感じてもらえるレストランを目指しました」と話す。3階には6、7人ほどが入れる落ち着いた個室も設けられている。料理には、台湾で十数年暮らしてきた稗田ならではの独特な感性が反映されている。「同じ日本料理とはいっても、国や風土が異なれば、表現方法も変わってきます。
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