長年バルセロナの後塵を拝してきたマドリードだったが、2023年に6億500万ユーロ(約980億円)のスタートアップ投資を獲得し、カタルーニャ州都の4億5,700万ユーロ(約740億円)を上回った。「近年導入された起業家ビザのほか、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア、ベネズエラの有望なスタートアップ設立者を誘致するTelefonicaの人材プログラムが功を奏し、ラテンアメリカ地域から優秀な人々が数多く集まっています」と、マドリードのImpact Hubでイノベーションコンサルタントを務めるブ・アセスは話す。

マドリードでは56もの大学が人工知能(AI)とディープテックの強化に取り組んでおり、この3年間に交通、モビリティ、フィンテックのスタートアップが着実な成長を見せている。「なかでもビジネススクールはスタートアップネットワークを構築するための豊富な機会を提供し、起業家エコシステムの開発に力を入れています」と、べンチャーキャピタル(VC)K Fundのジェネラルパートナー、ミゲル・アリアスは言う。

メタ・プラットフォームズ、IBM、グーグル、アマゾンがマドリードで事業を拡大しているなか、大きな懸念は学生やエンジニア、起業家の増加に住宅供給が追いついていないことだ。「いまの状況が続くとすれば、より手ごろな住宅がもっと必要です」とアセスは述べる。

Invopop

Invopopの共同設立者で最高技術責任者(CTO)のサム・ラウンはラテンアメリカ版UberであるCabifyのCTOを務めていたとき、国ごとに異なるフォーマットで請求書を発行しなければならないことを知った。南アメリカと欧州の30を超える政府は、売上が発生するたびに税務当局に報告を行なうことをオンライン事業者に求めている。報告規則も国によってばらばらだ。「すべての売上データを1カ所に送り、ひとつの会社にそれを処理してもらえれば便利ではないかと考えました」とラウンは話す。Invopopのプラットフォームを利用すれば、売上データを電子請求書に変換し、正しいフォーマットで現地の税務当局に報告することができる。CEOのフアン・モリネール・マラセチェヴァリア とともに、ラウンはYコンビネーター、Rebel Fund、Wayraから220万ユーロ(約3億5,500万円)を調達した。設立以降、Property Management Services、Amenitiz、Fever、Sundayをはじめとする同社の顧客企業500社が発行した請求書の数は25カ国で100万を超える。Invopopは今年Slack、Chargebee、Google ドライブと連携するInvopop Appを発表した。invopop.com

Uelz

Uelzはクレジットカード、モバイル決済、後払い決済など、各種の決済方法を採用する企業がオンライン決済を簡素化するためのプラットフォームだ。また、国によって別々の決済サービスプロバイダーを利用している国際企業向けのサービスでもある。そのプラットフォームはApple Pay、Visa、Global Payments、Klarna、Stripe、Truust.ioをはじめとするすべての決済ゲートウェイに接続している。また、サブスクリプションと1回払いを自動化し、最適な決済プロバイダーを選択する。例えば手数料率が国によって異なる場合は、手数料が最も安いゲートウェイが使用される。Uelzは決済を追跡管理し、販売チームおよび経理部門にデータを提供する。サンドラ・エチャベとマリア・ルーク・アスティガラガ(アトレティコ・マドリードの元ゴールキーパー)が共同で設立した同社は、Angels CapitalとWayraから200万ユーロ(約3億2,300万円)を調達した。25年はラテンアメリカ地域に事業を拡大する予定。uelzpay.com

Tucuvi

Tucuviは音声対話型人工知能(AI)と「バーチャルナース」のローラを提供し、退院後の患者の健康状態をモニターして再入院を減らす医療テクノロジー企業である。ローラは構造化された会話を通じて患者を指導し、その結果は担当の医療チームに送られ検討される。Tucuviはマリア・ゴンザレス・マンソとマルコス・ルビオによって19年に設立され、European Innovation Councilから550万ユーロ(約8億8,900万円)の資金を獲得した。ローラはスペイン語、ポルトガル語、英語に対応しており、これまでスペイン、ポルトガル、英国で扱った患者の数は60,000を超え、入院日数を26%短縮し、30日以内の再入院率を50%以上低減させた。tucuvi.com

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