▽政治的論争の的に
この買収計画はおととし12月の発表以降、政治的な論争の的となってきました。

トランプ氏は去年1月末「ひどい話だ。私なら即座に阻止する。絶対にだ」と述べ、大統領に再び就任した場合には、買収を認めない考えを明らかにしました。

このおよそ1か月半後、去年3月に今度はバイデン前大統領が買収に否定的な考えを示します。

さらにバイデン氏は去年4月に東部ペンシルベニア州ピッツバーグにあるUSW=全米鉄鋼労働組合の本部を訪れて演説を行い、USスチールは1世紀以上、アメリカの象徴的な企業だとした上で「完全にアメリカ企業であり続けるべきだ。アメリカ人によって所有され、世界で最も優秀な鉄鋼労働組合の組合員によって操業される企業であり続けることを約束する」と述べました。

続いて民主党の大統領候補となったハリス前副大統領も、USスチールはアメリカ国内で所有されるべきだとの考えを表明しました。

鉄鋼業界の労働組合の幹部から買収計画に反対の声が上がる中、この案件について安全保障上のリスクに関する審査を行ったのがアメリカ政府のCFIUS=対米外国投資委員会です。

委員会は去年12月、全会一致に至らず、バイデン前大統領に判断が委ねられることになりました。

▽バイデン前大統領が禁止命令
そしてバイデン氏はことし1月、国家安全保障上の懸念を理由に計画に対する禁止命令を出しました。

その後、就任したトランプ大統領はことし2月、石破総理大臣との首脳会談を行いました。

会談のあとの記者会見でトランプ大統領はUSスチールについて「われわれにとってとても重要な会社だ。私たちは会社がなくなってしまうのを見たくなかったし、実際にそうなることはないだろう。買収は印象としてよくない」と述べました。

▽トランプ大統領「USスチール所有ではなく多額の投資で合意」
その上で「彼らはUSスチールを所有するのではなく、多額の投資をすることで合意した」と述べました。

ただその後、記者団に対し日本製鉄によるUSスチールの株式の保有について問われ「誰もUSスチールの株式の過半数を持つことはできない」と述べて、株式の過半数を保有する形での買収は認めない姿勢を示しました。

▽CFIUSに再審査指示
そしてトランプ大統領はことし4月、CFIUSに対し再び審査を実施するよう指示する文書に署名。

異例の再審査によって買収が認められる可能性が高まったという見方も出ましたが、トランプ大統領は記者団に対し「日本のことは好きだが、愛されてきたUSスチールの外国企業による買収となると、私にとって認めることは難しい」と述べるなど、日本製鉄が子会社化する形での買収の承認には否定的な考えを改めて示しました。

そして、先月22日、ロイター通信は、CFIUSのメンバーの多くが安全保障上のリスクは軽減策をとることで対処が可能だという見解を示し、トランプ大統領に報告したと報じました。

▽両社のパートナーシップ承認意向示す
23日にはトランプ大統領がSNSに「熟慮と交渉を重ねた結果、USスチールがアメリカに残り、本社も偉大な都市ピッツバーグにとどまると発表できることを誇りに思う。これはUSスチールと日本製鉄の間で計画されたパートナーシップだ」などと投稿しました。

両社のパートナーシップを承認する意向を示す一方、その詳細については明らかにしませんでした。

30日にはトランプ大統領がペンシルベニア州ピッツバーグの郊外にあるUSスチールの製鉄所の集会で演説し「われわれはすばらしいパートナーを得ることになる」と述べる一方、「最も重要なことはUSスチールがアメリカにコントロールされ続けるということだ」と述べ、アメリカ企業であり続けることが重要だという認識を示しました。

▽ 「黄金株」米政府取得の認識示す
トランプ大統領は今月12日、ホワイトハウスで「私たちは黄金株を持ち、大統領が管理する」と述べ、USスチールの取締役の選任や解任など、経営の重要事項について拒否権を行使できる特殊な株式「黄金株」をアメリカ政府が取得するとの認識を示していました。

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