沖縄SVが迎える天皇杯2回戦。対戦相手はJ1・アビスパ福岡。カテゴリーの壁を越えたこの一戦に、GK宮﨑浩太朗は「特別なことをするつもりはありません。やってきたことを出し切るだけです」と、静かに闘志を燃やしている。

今季、福山シティFCから加入した宮﨑。昨年の天皇杯1回戦では沖縄SV戦のスタメンとして出場し、3−0の勝利に貢献した。そして迎えた2回戦。アビスパ福岡との対戦権を得たものの、宮﨑はメンバー外だった。「調子は良かったけれども…」と悔しさをにじませながら、0−8という結果をSNSで知ったという。

その経験は、間違いなく彼を成長させた。悔しさをバネにという言葉は簡単だが、今の彼の存在感はチームにとって大きなエネルギーとなっている。開幕から2試合はベンチスタートだったが、第3節・アトレチコ鈴鹿戦以降ゴールマウスを守り続けている。そこから9試合中5試合でクリーンシートを記録。複数失点を喫した試合はひとつもなく、その安定感が勝点を積み上げる原動力となっている。

ピッチ上での言葉数は少ないが、芯の通った力強さがある。「ミスを恐れず前に出る」姿勢を大切にし、ハイボールの処理やビルドアップでも積極的なプレーを見せている。その背景には、日々のトレーニングとチームメイトへの厚い信頼がある。

「ピッチ内外の一体感が本当に強い。ミスがあっても全員でカバーできる。そういう雰囲気が、思い切ったプレーを可能にしてくれています」。

これまでJFLで11試合を戦った沖縄SVは現在2位。3月の第2節・ラインメール青森戦(0●4)以降無敗を継続している。総失点8はリーグで2番目に少ない数字だ。「相手のシュートが少ないこともひとつとしてあるが…」という宮﨑だが、それは守備陣の努力とチームの連携の成果だと語る。

「シュートが来ないのは、みんながしっかり体を張ってくれているから。だからこそ、自分は飛んでくるシュートに集中して止める意識を持っています。守備陣への感謝は大きいですね」。

炎天下でも冷静なプレーを見せる宮﨑は、コンディション調整にも余念がない。リフレッシュの時間を大切にし、アイスバスを活用して心身のクールダウンを徹底。仕事と両立するハードな日々の中でも、自己管理を欠かさない。

「生活の一部としてサッカーに取り組んでいますが、将来的にはサッカー一本でやっていきたい。そのためにも今、自分の価値をプレーで証明したい」。

天皇杯・福岡戦に向けては、「相手の名前に臆する必要はない」と語る。自身でスカウティングも行っているが、焦点は常に「自分のプレー」にある。

「J1の選手といえど、同じ人間です。クオリティの差はあるかもしれませんが、やるべきことは変わらない。冷静に、そして強気に自分の持ち味を出していきたいです」。

今、彼が最も信じているのは、自らの準備と日々の積み重ね、そして仲間たちとの信頼関係だ。

挑戦者として、無敗の勢いをそのままに。宮﨑浩太朗が守るゴールは、未来を映す砦となる。

 

取材・編集・写真:仲本兼進(RYUKYU SOCCER PRESS)

 

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