総社市の市長が代表を務める第三セクターが、損失の穴埋めをするため、ふるさと納税の経費にあてると虚偽の申請をして、市から2億円を超える補助金を受け取っていたことが、NHKの取材で分かりました。
市も実態を知りながら補助金を交付していて、「今後、改善を図る」としています。
総社市の第三セクター、「そうじゃ地食べ公社」は、片岡市長が代表を務め、耕作放棄地対策や地産地消の推進事業のほか、ふるさと納税の返礼品にするコメの調達や発送を行っています。
公社は、ふるさと納税に関する事業に必要な経費にあてるとして、市から補助金を受け取っていて、NHKが情報公開請求を行って調べたところ、公社から提出された書類では、補助金の使途は返礼品のコメの調達や発送にかかる費用のうちの「調製費等」とされ、市の予算に関する文書では、「乾燥・調整費」「精米代」となっていました。
しかし、実際には公社の運営で生じた損失の穴埋めにも補助金を流用していたことが、NHKの取材で分かりました。
市の担当課も、こうした実態を知りながら補助金を支出していたことを認め、「公社に発生する見込みの損失額から、補助金の額を決めていた」としています。
公社は、令和3年度からの4年間で、市から2億円を超える補助金を交付されていますが、市の要綱では、虚偽の申請で補助金を受けたり、申請とは違う目的に使ったりした場合は、市は交付決定を取り消して、返還させることができます。
総社市は、NHKの取材に対して「補助金の申請や財務処理において誤解を招く表記になっていたことについては、今後、改善を図る」と回答しています。
また、NHKでは公社の代表を務める片岡市長に質問状を送り、こうした実態を把握していたか尋ねましたが、期限までに回答はありませんでした。
国や自治体による不正の監視に取り組んでいる全国市民オンブズマン連絡会議の事務局長を務める新海聡弁護士は、「補助金の虚偽申請であり、本来あってはならないことで、市の要綱から見ても取り消しの対象となる。市長には市が被った損害を回復する義務があり、公社に補助金の返還を命じなければ住民訴訟となる可能性もある」と指摘しています。
自治体のガバナンスに詳しい日本政策総研の若生幸也専務取締役は、一般的に第三セクターが抱えるリスクについて、「第三セクターは、公共性と企業性を合わせ持つが、公共性の色濃い事業と企業性、採算性は必ずしも相性がよくない。事業環境が悪化した場合、放置すれば破綻するため、自治体が赤字補填をするリスクがある」としています。
その上で、総社市の問題について、「市として経営健全化方針を策定し、財務制限事項、コベナンツを設け、一定期間、赤字が解消しなければ組織を解散することなどを定義する必要がある」と指摘しています。
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