土田陽介のユーラシアモニター

【土田陽介のユーラシアモニター】ねじれ政権が続くポーランド、高成長に期待がかかるが右派の勢力争いで政情不安も

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大統領選が実施されたポーランド、投開票の様子(写真:ロイター/アフロ)大統領選が実施されたポーランド、投開票の様子(写真:ロイター/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 6月1日に実施されたポーランド大統領選で、右派で反欧州連合(EU)の候補が勝利したことが話題になっている。ただ、この事実をもって、ポーランドで右派回帰ならびに反EUの動きが強まっていると評価することは早計だ。なぜならば、8月に交代する現職のアンジェイ・ドゥダ大統領も右派であり、反EUの立場だからである。

 ドゥダ大統領は最大野党の右派「法と正義」(PiS)に所属している。今回の大統領選で勝利した歴史家のカロル・ナヴロツキ氏もPiSの出身だ。今回の結果は、PiSの間で大統領のポストが移譲されたに過ぎないとも言える。それに、ナヴロツキ氏は大勝どころか、その得票率が50.89%にとどまったように、辛勝も辛勝、まさに滑り込みだ。

 つまり大統領のポジションそのものは、これまでも右派であり反EUの立場だった。ナヴロツキ氏が大勝したとなれば話は別だが、繰り返しとなるが今回は辛勝も辛勝である。こうした事実に鑑みれば、今回の大統領選を評してポーランドで右派回帰が進んでいると評するのは間違っている。むしろ、状況はほとんど変わっていないと言えよう。

 とはいえ、親EU派であるドナルド・トゥスク首相が率いる与党「市民プラットフォーム」(PO)の立場からは、また別の光景が見えてくることも確かだ。POは今回の大統領選で、惜敗した首都ワルシャワの市長ラファウ・チャフコフスキ氏を支持しており、チャフコフスキ氏が勝利すれば、ねじれ政権が解消されると期待された。

 現実には、ナヴロツキ氏の勝利により、今後もねじれ政権の下、ポーランドでは“決められない政治”が続くことになる。

 大統領選での勝利を2027年11月までに行われる次回の総選挙に向けた弾みとしたいPiSだが、そもそも辛勝であるし、新興右派政党の会派である「同盟」(Konfederacja)の台頭もあり、その先行きは明るくない。

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