韓国で3日早朝、大統領選挙の投票が始まった。尹錫悦前大統領が昨年12月に非常戒厳を宣布し、過去数十年で最悪の憲政上の危機を引き起こしたのを受け、新たな指導者を選ぶことになる。
先週実施された世論調査では、最大野党「共に民主党」の李在明候補が保守系与党「国民の力」の金文洙候補をリードし、優勢を保つ。支持率3位で改革新党の李俊錫候補は元国民の力党首でもあり、保守票を割っている。現地時間午前6時(日本時間同じ)に始まった投票は午後8時に締め切られる。

最大野党「共に民主党」の李在明候補(6月2日、ソウル)
Photographer: Anthony Wallace/AFP/Getty Images
大統領選の勝者は深く分断された社会を統一し、経済成長の回復を図るという課題に直面する。韓国経済は縮小傾向にあり、トランプ米大統領の関税政策に最も脆弱(ぜいじゃく)な国の一つでもある。
選挙結果は外交政策にも影響を及ぼす可能性がある。候補者たちは総じて米国、日本との3国間関係の強化を継続する意向を示しているものの、李在明候補は米国と中国の双方に対して一段とバランスの取れたアプローチを志向しており、北朝鮮との対話の可能性に言及している。
金文洙候補は、罷免された尹前大統領の立場に近く、北朝鮮に対して強硬姿勢を取り、米国との間で核資源を共有する北大西洋条約機構(NATO)型の枠組みを模索している。

保守系与党「国民の力」の金文洙候補(6月2日)
Photographer: Pedro Pardo/AFP/Getty Images
約4440万人の有権者のうち、先週の期日前投票期間中に既に1500万人余りが投票を済ませた。3日の金融市場は休場。
今回の大統領選は尹前大統領が罷免されたため、前倒しで実施された。尹氏は昨年12月に非常戒厳を宣布したが数時間後に撤回に追い込まれ、国会で弾劾訴追案が可決。憲法裁判所も4月に弾劾訴追は妥当との判断を下した。
尹前大統領は非常戒厳について、国会で数カ月に及ぶ行き詰まりと、野党政治家の間に根強く残る北朝鮮への共感に対応するために必要な措置だったと説明した。尹氏は過去21年間で弾劾裁判に直面した3人目の大統領となった。
短命に終わったこの非常戒厳は国内外に衝撃を与え、金融市場を動揺させ、弾劾訴追、抗議デモ、暫定指導者の交代が続く混乱の半年間を招いた。

改革新党の李俊錫候補(5月28日)
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進歩派の元労働弁護士で、前回の大統領選で尹氏に小差で敗れた李在明候補は、政府支出の拡大や労働者保護の強化、韓国の財閥が持つ力の抑制を訴えている。大統領2期制を可能にする憲法改正や国内の石炭火力発電所の閉鎖を支持する。
尹氏の弾劾を主導し、一時は勝利が確実視されていた李在明候補だが、保守派のライバルである金文洙候補が支持を伸ばしている。
金文洙候補もかつての労働運動家であり、軍事政権下で投獄された経験もあるが、現在は企業寄りの保守派としての姿勢を打ち出している。規制緩和や中小企業支援、減税を公約に掲げる。また、李在明候補と同様に大統領2期制を支持している一方、原子力発電に関してははるかに積極的な立場を取っている。
残る候補者の中では、李俊錫候補が金文洙候補よりも若年層や一段と幅広い有権者層へのアピールを重視した選挙運動を展開し、保守票を分裂させている。李俊錫候補は将来的に信頼に足る指導者としての地位を築こうとしている。
李在明候補が当選すれば、母体の政党が国会で圧倒的多数を占めているため、尹前大統領が直面したような立法上の障害はほとんどないと考えられる。他方、金文洙候補が当選の場合は、就任初日から多数派を欠く大統領として国会での抵抗に直面することになる。
輸出依存型の韓国経済がトランプ関税の全面的な影響を受けるのを回避するためにも、米国との新たな貿易協定が最優先事項の一つとなりそうだ。李在明候補は米国との早期合意に急ぐ必要はないと主張しているのに対し、金文洙候補はトランプ氏と直接会談することで、迅速に合意をまとめることを望んでいる。
米国が韓国への賦課を発表した25%の上乗せ税率は、同盟国の中でも最も高い水準の一つだ。現在は90日間の停止措置が講じられているが、韓国指導部の空白により対米交渉の進展は限定的となっている。さらに分野別の追加関税の賦課で、半導体や自動車、鉄鋼・アルミニウムなどの主要な輸出産業に打撃が及ぶ。
これらはいずれも韓国の新たな指導者が引き継ぐ経済に暗い影を落とすことになる。
原題:South Korea Votes for a New Leader to Heal Nation, Regain Growth(抜粋)
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