
トランプ米大統領は25日、欧州連合(EU)からの輸入品に50%の関税を発動する時期について、フォンデアライエン欧州委員長からの要請を受けて6月1日から7月9日に延期すると表明した。写真はEUの旗と「関税」の文字。4月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic)
[ブリュッセル 26日 ロイター] – トランプ米大統領は25日、欧州連合(EU)からの輸入品に50%の関税を発動する時期について、フォンデアライエン欧州委員長からの要請を受けて6月1日から7月9日に延期すると表明した。 もっと見る
 これでEUはひとまず深刻な事態を回避できたかもしれない。トランプ氏とフォンデアライエン氏は電話会談で、双方の合意に向けた迅速な協議を行うことに合意。欧州委員会
 は、この会談で協議に弾みがつくと期待を示した。
しかし米国側の大幅譲歩要求に対応しながら「互恵的」な貿易協定を成立させていく道筋は、依然としてはっきり見通せていない。
実際、トランプ氏とフォンデアライエン氏の会談でも、何か具体的な進展があったという形跡は乏しかった。
EUが米国との間で合意を目指しているのは、互いに工業製品の関税をゼロにするとともに、EUが米国からより多くの大豆や液化天然ガス(LNG)を購入するといった内容。あるEU高官は、米英両国が今月合意したように、EUとしては米国産牛肉の拡大も視野に入れていると明かした。
欧州委は26日、工業製品の「ゼロ対ゼロ関税」の妥当性をこれから順序立てて説明していく考えだと強調。広報担当者は「それこそが、欧米双方の恩恵につながる適切な交渉に向けた非常に魅力的な出発点だとわれわれは信じている」と述べた。
EUは、欧米がともに中国の責任と主張する世界的な過剰鉄鋼生産問題や、人工知能(AI)などのデジタル技術分野で米国と協力できるとも想定している。
一方でEUが切望しているのは、トランプ政権が打ち出した鉄鋼製品と自動車への25%の関税と、EUに対する「相互関税」の撤廃だ。EUへの相互関税は当初20%と発表されたが、その後7月までは上乗せ分を除く10%が適用される形になった。
<限度を超えた要求>
ただ米国はEUとの間で抱える貿易赤字削減を狙っているほか、付加価値税(VAT)や食品安全基準、各国のデジタルサービス税などの「非関税障壁」のリストを送付して対策を求めている。
交渉に詳しい業界関係者の1人は、トランプ氏は目に見える成果と象徴的な「得点」の混ざった速やかな合意にこぎ着けたがっているが、EUに迫っている譲歩の程度はこちら側が受け入れ可能な限度を大きく超えていると指摘した。
例えば税制に関しては、決定はEU加盟各国の権限に属するため、欧州委だけで片付く話ではない。
今週代表団を率いて訪米した欧州議会国際貿易委員会のランゲ委員長は、特定分野では米国が実際に存在しない貿易障壁に目を向けていると困惑。「それはEUの基準や化学製品、デジタルの規制であり、決して非関税障壁ではなく、交渉の議題にはならない」と付け加えた。
ランゲ氏は、EUとして何か個別の規制が行き過ぎかどうか検討はできるものの、トランプ政権が要求するような全ての米国基準を採用しろというのは無理だと述べた。
アイルランドのヘイドン農相は26日、EUは互恵的な貿易協定を提唱する権利があり、EUが「全く譲歩しない」というトランプ氏の不満はこうしたEUの立場への賛辞にほぼ等しいと主張。「われわれ(EU)は米国にとって最も重要な貿易相手の1つだ。そうである以上、米国の要求に何でも同意するべきでなく、交渉し、互恵的な貿易とは何かを説明していかなければならない」と訴えた。
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