サマーズ元米財務長官は、5日に台湾ドルが急伸したことについて、資本流入の減少リスクという、トランプ政権がいまだ対処できていない重要な問題を浮き彫りにしたと指摘した。

  台湾ドルが1988年以来の大幅高となった原因はまだ完全には分かっていない。だが、市場関係者によると、台湾当局がトランプ大統領との貿易合意を目指す一環として、通貨高を容認するとの観測が広がっていたことが一因とされている。米国が貿易赤字を抱える相手国・地域の中で、台湾はトップ10に入る。

  サマーズ氏は「台湾の事例は、資本流入と貿易赤字を巡る一段と広範な問題の一端を示している」とブルームバーグテレビジョンで発言。「単純に計算上、米国の貿易赤字は外国からの資本流入を減らさずには解消できない」と述べた。

  経済理論では、貿易赤字は資本収支の黒字によって相殺されるとされる。米財務省のデータによると、昨年の外国からの対米証券投資は約1兆1000億ドル(約160兆4400億円)の純流入となっており、これは年間の財の貿易赤字(約1兆2000億ドル)にほぼ匹敵する。

  サマーズ氏は「貿易赤字を憎みつつ、資本流入を歓迎するという矛盾について、政権がきちんと認識しているとは思えない」と語った。

  ベッセント財務長官は今週、米国が国際金融で中心的な役割を果たしていると称賛し、世界の投資マネーをさらに呼び込むような魅力的な市場にする方針を示した。

  これに関連してサマーズ氏は、「政権が掲げる貿易赤字縮小に取り組みつつ、金利抑制に不可欠な資本流入をどう維持するのかという根本的な問題について、長官が慎重に向き合っているのを聞いたことがない」と述べた。

  外国人投資家は米国債のおよそ30%を保有しているほか、社債など他の証券にも広く投資している。こうした外国人投資家の存在感が薄まれば、米国の借り入れコストには上昇圧力がかかる。アジアの国・地域は米国にとって多額の貿易赤字を抱える相手である一方、資本流入の主要な供給源でもある。

原題:Summers Says Taiwan Dollar Jump Spotlights Treasury Math Problem(抜粋)

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