公開日時 2025年05月01日 05:00更新日時 2025年05月01日 09:46
久米島近海で撮影されたジュゴンとみられる生物(提供)
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普天間 伊織
久米島の近海で4月29日、国指定天然記念物のジュゴンとみられる生物の写真が撮影された。約20年間ジュゴンの調査を続けている県環境科学センター・総合環境研究所の小澤宏之所長は、琉球新報の取材に「間違いなくジュゴンだ」と断言し、傷の位置などから3月に台湾で定置網にかかり放流されたジュゴンと同個体の可能性が高いと指摘する。
県によるとジュゴンの個体が県内で撮影されるのは、2019年に今帰仁村で死骸が発見されて以来という。
29日午前10時ごろ、久米島南西の海域でダイビングをしていたインストラクターと客ら5人が発見し、客の1人が撮影した。目撃した久米島ダイビングセンターSHIRAHAMA代表の紙治美さんによると、体長は2メートルを超えるほどで、水深約5メートルの岩場を泳いでいた。「まさか泳いでいるジュゴンと海中で出合うとは思わず、衝撃で固まってしまった」と話している。
小澤所長によると、17年に渡名喜島でも目撃されており「本島と先島の中間にある久米島や渡名喜島周辺には藻場が多く、他にも見つかる可能性が高い」という。3月25日に台湾・宜蘭県の沿岸に設置された定置網にかかり、その後放流されたジュゴンと身体的特徴や傷の位置などが一致していることから「同個体である可能性が極めて高い」と分析する。
ジュゴンネットワーク沖縄の細川太郎事務局長も、体の傷や皮膚が擦りむけた痕など複数の共通点を根拠に、同じ個体である可能性を支持。「発信機もつけていない同個体が確認されることは奇跡に近い」と話す。
約1カ月で台湾から久米島まで約540キロの距離を移動していることになり、ジュゴンの長距離移動の記録がほとんどない日本国内では貴重なデータになる。「今後の調査で餌場の場所を突き止め、ふんの採取などが可能になれば、個体識別もでき研究が大きく前進する」と期待を示した。
県自然保護課は詳しい情報を確認しており、今後は関係機関と連携して久米島近海での調査も検討するとした。県の23年度調査では、11地点で食(は)み跡が確認されている。県は「現在も県内の広範囲にジュゴンが生息している可能性が極めて高いことが確認された」と結論付けている。
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