トランプ米大統領のブレーンによる論文は、40年前の国際的な為替水準調整の再現と読み解ける。

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 エコノミスト業務では生起確率が極めて低いと思われる「びっくり予想」、いわゆるブラックスワンの論点を尋ねられることが多い。この点、筆者は昨年末から「プラザ合意2.0」の可能性を紹介するようにしてきた。すでに4月初頭の相互関税がブラックスワンだという解釈もありそうだが、為替水準に無理やり切り込むような話があるとすれば、それ以上の衝撃をもたらす懸念が否めない。

プラザ合意前後のドル高

 後述するように、すでにドル相場は歴史的な高値を付けており、2026年に中間選挙を控え、ラストベルト(赤さび地帯)の支持を背負うトランプ政権が看過できるのかという争点が浮上している。なお、こうした米国主導のドル高是正にまつわる観測は、第2次トランプ政権の米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長に指名されているスティーブン・ミラン氏が昨年11月、「マール・ア・ラーゴ合意」という名前で新たな多国間通貨合意の枠組みを論文内で紹介したことからも注目されている。周知の通りマール・ア・ラーゴはトランプ大統領がフロリダ州に持つ邸宅だ。

 もっともミラン氏の論文は政策提言というより、あくまで選択肢の一つとして、そのような論点を紹介したにすぎず、今後の実行可能性は未知数である。しかし、実効ドル相場を見た場合、名目・実質ベースともに過去10年以上、上昇局面が続いており、実質ベースに至っては1985年のプラザ合意前後の水準に接近している(図)。国際協調によるドル高是正が正当化された時代と同水準が視野に入る事実を保護主義推進者であるトランプ氏がどう評価するか。ミラン氏がドル高に着目し、その修正可能性に着目したのはある種必然といえるだろう。

 プラザ合意のあった85年当時のカーター大統領は米国内(特に米…



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