欧州の保険監督当局のトップは、米国債の「安全資産」としての地位は最近の相場変動の大きさによって疑問が投げかけられていると述べた。

  事情に詳しい関係者によると、欧州保険・企業年金機構(EIOPA)のペトラ・ヒールケマ議長は先週、欧州連合(EU)の金融監督当局を代表して行ったプレゼンテーションの中で、このような発言を行った。

  非公開の会合での発言だが、長らく「無リスク資産」とされてきた米国債を巡り不安が広がっていることを示唆するものだ。欧州の規制当局が現時点で具体的な対応に踏み切った兆しはないものの、こうした発言は、過去数週間で米国債に対する世界の見方がいかに急速に変化したかを浮き彫りにする。

  米国債市場はこのところ激しい値動きに見舞われている。特に先週は、トランプ米大統領が推し進める関税政策が世界貿易を混乱させ、米経済の景気後退(リセッション)を招くとの懸念から、10年債利回りは週間で2001年以来の大幅上昇となった。一方で投資家は金やドイツ債、ユーロなど代替資産に目を向けた。

Treasury Volatility Spikes Higher | Intraday range of 30-year yield widens

 

 

  EIOPAにコメントを求めたが、現時点で返答は得られていない。

  関係者によると、ヒールケマ氏は、米政府が関税の一部停止を決定した背景に恐らく米国債市場の混乱があったとの見方も示した。関係者は非公表の発言だとして、匿名を要請した。トランプ氏は先週、関税停止は貿易相手国に合意を結ぶ機会を与えるためだと示唆したが、同時に債券市場は「非常に複雑だ」と述べていた。

  ヒールケマ氏はまた、ヘッジファンドやプライベートクレジットなど、透明性が比較的低い市場で問題が表面化する可能性があると述べたと、関係者は説明。国債以外の証券を担保として使う企業が、将来的に流動性のひっ迫に苦しむ恐れもあるとの認識も示したという。

  規制当局は今のところ市場は適切に機能していると主張しているものの、ロングの株式デリバティブを抱える企業や、固定金利を支払い変動金利を受け取る企業の間でマージンコール(追加証拠金請求、追い証)が増えていると、会合での協議を知る別の関係者は指摘した。ヘッジファンドはハイイールド証券やプライベートエクイティー(PE、未公開株)の持ち高を削減した。

  市場の混乱で欧州の銀行セクターも影響を被っているが、数年にわたり積み上げた資本バッファーのおかげでこの変動を乗り切れるだろうと、関係者は述べた。欧州証券市場監督機構(ESMA)の代表者は、現在の混乱は米国の金融・市場参加者による支配を抑制する機会になるかもしれないとの認識を示したという。

  ESMAの代表は会合に参加したことは認めたが、話し合われた内容についてコメントを避けた。

原題:Europe’s Financial Watchdogs Question Treasuries’ Haven Status(抜粋)

(第6段落以降に情報を加えます)

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