ルイ・ヴィトン 2025年クルーズコレクションより。
Photo: Filippo Fior / Gorunway.com
現在に至るまで、10年以上にわたりニコラ・ジェスキエール率いるルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)は、世界各国の偉大な建築物でデスティネーション・ショーを開催してきた。今年会場に選ばれたのは、建築家アントニ・ガウディにとよって設計されたグエル公園。当初は田園都市型の分譲住宅地として構想されたものの、第一次世界大戦が始まると計画は断念され、やがて公園としてバルセロナ市に寄付された場所だ。以来、ガウディの傑作、サグラダ・ファミリアと並んでバルセロナの主要な観光名所のひとつとなっている。
ルイ・ヴィトン 2025年クルーズコレクションより。
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ルイ・ヴィトン 2025年クルーズコレクションより。
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グエル公園の幻想的な雰囲気は、ジェスキエールがメゾンのアーティスティック・ディレクターに就任してからの10年間で確立してきた、さまざまな時代のテイストをないまぜにし、時空を超えるコードに合致するものだが、今回のショーはグエル公園をインスピレーションの主軸にしているわけではない。モザイクタイルで装飾された天井の「ハイポスタイル」ルームで発表されたクルーズコレクションは、一見ガウディへのオマージュのように思えるが、実際はあらゆるスペインの偉人などから影響を受けている。現にショー前のインタビューでジェスキエールはベラスケス、ゴヤ、スルバランなどの芸術界の巨匠、伝説の映画監督ルイス・ブニュエル、各国の映画賞で表彰されたロドリゴ・ソロゴジェン監督のスリラー映画『理想郷』(2022年)、ルイ・ヴィトンがメインスポンサーを務め、8月にバルセロナで開催される第37回アメリカズカップをインスピレーションに挙げた。
スペインという今いる場所を称えた芸術的表現
ルイ・ヴィトン 2025年クルーズコレクションより。
Photo: Filippo Fior / Gorunway.com
ルイ・ヴィトン 2025年クルーズコレクションより。
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ルイ・ヴィトン 2025年クルーズコレクションより。
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「今いる場所に敬意を表したかったんです」とジェスキエールは語す。「この国には、地に足をつけたある種の厳かさがある一方で、自由や若さ、そしてどこか贅沢さを感じさせるところがあります。そこか好きなんです」
2つの側面の押し引きは、コレクションでも繰り広げられた。オープニングを飾ったのは、ストローのガウチョハットとミラーレンズのサングラスでアクセント加えた、ニュートラル一色のテーラードのルック。中でもワイドカラー、広いショルダーライン、逆三角形のラインが特徴の1番目と3番目のルックは、昔ながらの船員のジャンパーとジェスキエールが青春時代を過ごした80年代に注目を集めたシルエットから着想。「かなりドレスアップしていて、カジュアルな要素は一切ないですね」と彼は話した。しかし、終盤になるとトーンは一変し、かっちりとしたペチコートやコートドレスに代わって、ボリューム感のあるシルクスカートやドレープボトムが登場。これらの折り目が作り出す明暗は、ジェスキエールがインタビューでも触れたスペインの偉大な画家が残した絵画を彷彿とさせた。
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