Photo showing a train going across a bridge

Courtesy of Darío Solano‐Rojas

これはメキシコシティだけの問題ではない。今年の初めにシルザエイたち研究者は、東海岸のインフラがゆっくりとではあるが着実な地盤沈下の影響で深刻な状況に直面している事実を発見した。彼らの試算では、大西洋岸の75,100平方kmもの土地が毎年2mmほど沈下している。これにより、1,400万の人々および600万の不動産が影響を受ける。およそ3,700平方kmの土地では、1年で50mmほど沈んでいた。

地下水の過剰な汲み上げの影響

不同沈下の影響を受けるのは鉄道だけではない。研究チームの調べでは、堤防や空港などといった重要なインフラのすべてが危険に晒されることになる。そこに加えて、ニューヨークのような大都市では、都市の重量だけでも地盤沈下の原因になる。また、カリフォルニアのベイエリアも沈下している。東西の両海岸で、地盤沈下が海面上昇の問題を悪化させている。海面が上昇しているなか、土地が沈んでいるのだ。

世界のどこであれ、地盤沈下を食い止めるためには、地下水の過剰な汲み上げをやめなければならない。最新式のシステムを用いれば、帯水層への負担を減らすことが可能だ。例えば、下水を飲料水としてリサイクルするコストは、ますます低くなりつつある。また、スポンジ化されたインフラを取り入れる都市も増えてきた。緑の空間を増やせば、雨水が地下の帯水層へ流れ込み、土壌が膨らんで沈下しにくくなる。メキシコシティをはじめとして世界の多くの土地が気候変動の影響で干上がりつつあり、地下水の供給がますます逼迫するなか、そのような努力は緊急性を増している。

地盤沈下をすぐには回避できないとしても、衛星から得られるデータが増えれば、都市は問題にいまよりも巧みに対処できるようになるだろう。ソラノ=ロハスはこう締めくくった。「こうした研究を活用すれば、各国政府はより体系的に行動計画を立てることができると、わたしは確信しています」

(Originally published on wired.com, translated by Kei Hasegawa/LIBER, edited by Mamiko Nakano)

※『WIRED』による都市の関連記事はこちら。気候変動の関連記事はこちら。

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