ソマリアのダダーブ難民キャンプ
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米国による対外援助の凍結が、ジュネーブに拠点を置く多数のNGO(非政府組織)の活動を脅かしている。各団体は早くも活動の縮小や職員の削減を強いられ、現地の活動にも影響が出始めた。
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/07 08:30
Häubi Rachel Barbara
戦争、人道危機、気候変動、健康などの地政学的問題を担当し、SWI swissinfo.ch、Géopolitis RTS、欧州放送連合(EBU)の共同事業である「ジュネーブ・ビジョン」編集プロジェクトをコーディネートする。
元環境ジャーナリストとして、原材料に強い関心を持ち、北極圏での採掘紛争について報道。地理学を専攻し、ジャーナリズム・メディア・アカデミーで調査報道、ビデオ、データ・ジャーナリズムを専門に学び、Temps présent (RTS)、Le Temps、24 Heures、Heidi.news、Geneva Solutionsなどと協力。
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In Genf und im Feld: NGOs im Sturm des US-Förderstopps
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De Genève jusqu’au terrain, les ONG dans la tourmente du gel américain
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「これは私が経験した中で最悪の状況だ」と語るのは、国際児童保護NGO「テールデゾム」(本部・ローザンヌ)のナイロビ支部で運営責任者を務めるクレイグ・タッカー氏だ。同氏は仏語圏スイス公共放送(RTS)の取材に「現場で活動する職員たちは、栄養不良の状態にある子供たち、性被害にあった子供たち、虐待された子供たちの中から誰を救うべきか、選択を迫られている」と警鐘を鳴らした。
テールデゾムには、2025年1月下旬にトランプ政権から受け取った書簡のもたらした衝撃の余韻が残る。書簡には「米国政府の資金は、いかなる階層、いかなる方法においても、DEI(多様性、公平性、包摂性)を促進する活動に充ててはならない」と書かれていた。
テールデゾムのバーバラ・ヒンターマン事務局長は、これまで25年間、人道支援に携わってきたが、このような状況に直面したのは初めてだと述べる。「米国政府からの書簡で、DEIプログラムを筆頭に、複数のプログラムを即座に停止するよう求められた」。テールデゾムは活動資金の10%(約1000万ドル)を米国に依存しているため、多くの主要プロジェクトの停止を余儀なくされた。その中には、インドとレバノンでの医薬品配布と医療行為の提供、さらには戦争で近隣の国からケニアに逃れ、トラウマを負った未成年者への支援などが含まれる。
現地職員は半減
支援凍結がもたらす現場への影響を測るため、RTSはソマリア国境近くのケニア北東部に位置し、かつて3つの難民キャンプがあったダダーブを訪れた。人口40万人以上、その半数が子供であるこの町で、米国の資金支援は、テールデゾムの活動予算の半分を占めていた。
援助凍結の影響は甚大だ。現地で活動していた職員約100人のうち、残留しているのは僅か50人だ。この事態に対し、テールデゾム・ダダーブ支部の元職員アリ・アブディ・アブドゥッラー氏は「まさに大打撃だ。私はまだ1、2カ月は給料なしで持ちこたえられる。だが、ソマリアのような国から逃れてきた難民の子供たちを想像してみてほしい。支援と保護と食べ物を求めてこの地にやってきたのに…」と懸念を見せる。まさに資金と資源の不足により、多くの子供向け支援センターが閉鎖された。そして、残存するセンターでは、最も深刻なケースのみを受け容れる以外に選択肢はない。
マスク氏のアンケート
米国の資金凍結は、国際都市ジュネーブに著しい影響を与えた。ジュネーブには500以上のNGOが拠点を置き、うち約100団体が米国からの資金援助に大きく依存している。これらの組織は最近、起業家イーロン・マスク氏が米国連邦政府内での歳出削減と思想弾圧外部リンクを掲げて指揮を執る新設の米政府効率化省(DOGE)からアンケートを受け取った。
そこには、「貴団体が共産主義、社会主義、全体主義政党、またはその他の『反米的な考え』を持つグループに関連する団体と協力関係にないか」あるいは「手掛けているプロジェクトが気候変動や『環境正義』を扱っていないか」という質問が並び、協力関係やODA(政府開発援助)とは相容れない米国の政治的な姿勢が反映されている。
ジュネーブ・ウェルカムセンター(Cagi)のヤニック・ルラン所長は、「NGOは海外の現場での活動のみならず、ジュネーブでの将来についても、雇用や組織存続の面で懸念を抱いている」と解説する。さらに、「多数のNGOから人員削減、オフィススペースやサブリースの縮小、対面会議のキャンセル、代表団の来訪中止」など、既に明確な影響が出ているという。
大量解雇も
ジュネーブ空港付近に本部を置くNGO「インパクト・イニシアチブ」は、人道支援の最適化を目標に掲げ、危機地域でのデータ収集に特化している。米国政府からの支援金が予算の60%を占めていた同団体は、最も深刻な打撃を受けた組織のひとつだ。米国の支援凍結により、合計400人以上の職員が解雇され、ジュネーブだけでも約40人が職を解かれた。
インパクト・イニシアチブのヴァレリー・プティピエール代表は「オフィスには悲哀が満ちている。多くの同僚にとって、仕事は天職、使命、そして情熱を持って取り組んでいた業務で、単なる職業以上のものだった」と語る。現状は「国際協力や人道支援の未来に対する大きな不安を感じざるを得ない」とこぼす。
新たな資金調達に向けた取り組みが積極的に進められてはいるものの、先行きは不透明だ。ジュネーブ州政府は、在ジュネーブのNGOを支援するために、1000万フラン(約17億円)の財政支援案を州議会に提出した。
2月の州議会で法案自体は可決されたが、即時発効を求める緊急条項は否決され、給付は4月中~下旬を待たなければならなくなった。その間、国際都市ジュネーブを支える柱であるNGOは、その使命感、職員たち、そして特に世界中で支援している何百万人もの受益者に、財政的な激震がもたらす深刻な被害を恐れている。
仏語からの翻訳:横田巴都未、校正:ムートゥ朋子
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