浅野拓磨が所属するマジョルカが今季、スペインリーグで好調を維持し、欧州リーグ出場権獲得が射程圏の9位につけている。

昨季15位で終わったことや、サラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)がスペインリーグ20チーム中11番目の5884万1000ユーロ(約94億1456万円)であることを考えると、十分な成績と言えるだろう。

■アラサテ監督、攻撃的スタイル構築

マジョルカ躍進の鍵は、今季就任したアラサテ監督が昨季までチームを率いたアギーレの遺産を生かしつつ、オサスナでの6年間で培った経験を加えたプレースタイルを実践していることだ。

アギーレのトレードマークである堅固な守備を維持しつつも、保守的なプレースタイルの脱却に成功した。システムを5バックから4バックに変更し、マフェオやモヒカのような攻撃的サイドバックを重視している。前任者のように後方で相手のミスを待つのではなく、ブロックを高い位置に敷いてハイプレスをかけ、ボールを奪うとウイングは素早く縦に仕掛け、前線で待ち構えるチーム得点王のムリキを狙っていく。

得点は多くないが、ゲームをうまくコントロールして順調に勝ち点を積み重ね、前半戦を6位で折り返した。年明け直後に大きく調子を崩し、公式戦5連敗という苦しい時期を過ごしたが、対戦相手によって5バックを取り入れたことが功を奏した。直近のバレンシア戦で約2カ月ぶりに敗れるまで、15年ぶりの偉業となるリーグ戦6戦連続無敗を達成していた。

メンバーに目を向けると、GKグレイフ、DFのマフェオ、ライージョ、バリエント、MFダニ・ロドリゲス、アントニオ・サンチェス、FWムリキ、アブドンといった久保建英が3季前にプレーしていた頃から所属している選手たちや、MFサム・コスタ、ダルデル、マスカレル、モルラネス、FWラリン、今季加入したDFモヒカ、MFロベルト・ナバーロ、FW浅野などがチームを構築している。

■負傷離脱も2月以降に定位置を奪取

中でも、優れたモチベーターでもあるアラサテ監督に能力を存分に引き出されたダルデルは全盛期の輝きを取り戻し、サム・コスタはポルトガル代表に招集されるまでに成長し、中盤の大黒柱になっている。

浅野も最近のチームの好成績に大きく貢献している。ハードワークとスピードを武器に、監督の信頼をすぐさま勝ち取り、開幕時に右サイドのアタッカーとしてレギュラーの座を確保した。そんな矢先、9月半ばのレアル・ソシエダ戦で負傷し、2カ月以上、9試合の欠場を余儀なくされたことは非常に残念だった。

12月の復帰後もチームが好調だったためスタメン獲りに苦しんだが、チームが不調に陥ったこともあり、2月半ばに転機が訪れる。今年のリーグ戦初先発となった第24節ラス・パルマス戦で、オーバーヘッドを放つなどの素晴らしいパフォーマンスを見せて加入後最も高い評価を受けると、それ以降、右サイドハーフでレギュラーの座を確固たるものにし、ここ6試合連続で先発している。

その間、第26節アラベス戦で初得点を挙げて初MVPを受賞し、第28節エスパニョール戦では2点目を記録。バレンシア戦はエースのムリキ不在の中、2トップの一角でプレーして最も多くの決定機を作った。プレーが終わるまで諦めることなくボールを追い続け、どんな体制からでもゴールを狙い、現在チームで特に好調な選手の1人になっている。

■「チームを家族のように感じている」

浅野は最近、自身の状況について、「すぐにチームに適応できたと思う。ピッチでよくチームメイトと話をしているが、ピッチ外でも会話するし、一緒に夕食に出かけたりもする。このチームを家族のように感じているよ。とても居心地がいいんだ。チームメイトに本当に感謝している」と充実ぶりをうかがわせていた。

マジョルカのスペインリーグ成績は29試合11勝7分け11敗の勝ち点40で9位。残り9節で、5位ビリャレアル、6位ベティスと勝ち点7差、7位ラヨ・バリェカノ、8位セルタと勝ち点で並んでいる。久保擁するレアル・ソシエダードやバルセロナ、レアル・マドリードなどの注目カードがまだ残っているが、最近の調子を維持できれば、03-04年シーズン以来、22年ぶりの欧州カップ戦出場も夢ではないだろう。

【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

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