9日に開票が行われたカナダ与党・自由党の党首選で、カナダ銀行(中央銀行)総裁とイングランド銀行(英中央銀行)総裁を歴任したマーク・カーニー氏が選出された。1月に辞意を表明したトルドー氏に代わり、カナダの次期首相に就任する。
トランプ米政権がカナダからの輸入品への関税などで同国に揺さぶりをかけ、経済の先行きが脅かされる重大局面で、カーニー氏(59)は政権運営を担う。カナダの首相交代は2015年以来約9年ぶり、自由党の党首交代は13年以来約12年ぶりとなる。
カーニー氏は国会に議席がなく、政治家としての真価は未知数だが、世界的金融危機、英国の欧州連合(EU)離脱という二つの重要な転機に金融政策運営に当たり、「クライシスマネジャー」としての実績を持つ。
マーク・カーニー 氏
Photographer: Graham Hughes/Bloomberg
対米貿易に大きく依存するカナダに対し、トランプ米大統領は、カナダを51番目の州にするため「経済力」を行使する意向さえ示唆した。
与党党首に選出されたカーニー氏は勝利演説で、「米国はカナダではない。いかなる形でもカナダが米国の一部になることは決してない。この闘いはわれわれが求めたわけではないが、(殴り合いのために)誰かがグローブを投げ捨てれば、カナダ人は常に相手をする用意がある。貿易でもホッケーでもカナダは勝つ」と訴えた。
トランプ政権はカナダからの輸入品に対する25%の関税を4日に発動し、カナダも報復関税で対抗。その後、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準に適合するカナダからの輸入品について、「相互関税」を導入する4月2日まで適用が一時猶予された。
関連記事:米の対カナダ・メキシコ関税、USMCA準拠品4月2日まで延期
カーニー氏は「米国がわれわれに敬意を示し、自由で公正な貿易への信頼できる確約が得られる」まで、米国製品への報復関税を維持すると表明した。関税からの収入は全て労働者の保護に充てるという。
信頼に足るパートナーとの新たな貿易コリドー(回廊)の創設、「エネルギー大国」への変貌を通じて、カナダを主要7カ国(G7)最強の経済大国にするため、重要な投資を行うと約束した。
カナダ与党・自由党の党首選で、マーク・カーニー氏が選出された
Source: Bloomberg
トランプ大統領の言動は、カナダ国民の愛国心を刺激して怒りに火を付け、米国製品のボイコットに加え、新たな貿易パートナーに目を向けるよう政府に求める声が高まった。トルドー首相は、トランプ氏によるカナダの主権への脅しを真剣に受け止めるべきだと述べていた。
一方、トランプ氏は、カナダ産の木材と乳製品にも新たな関税を課す可能性に言及し、ラトニック米商務長官は3月9日、鉄鋼とアルミニウムへの25%の追加関税が12日から予定通り発動されると見通しを示した。
自由党党首選でのカーニー氏の得票率は85.9%に達し、フリーランド前副首相兼財務相らを上回る支持を得た。トルドー首相からの権限委譲は数日中に行われる見込み。新首相が就任後、総選挙の実施に動くことも想定される。
カーニー氏は08年から13年までカナダ中銀総裁、13年から20年まで英中銀総裁を務めた。
原題:Mark Carney Wins Canada Liberal Race, Will Succeed Trudeau (1)(抜粋)
(動画クリップを追加して更新します)
WACOCA: People, Life, Style.