日銀、政策金利は現状維持 不確実性高い:識者はこうみる

日銀は19日、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.50%程度で維持することを全員一致で決定した。声明文では、トランプ米政権の関税政策と各国の対抗措置が海外の経済・物価に及ぼす影響などをリスク要因に挙げた。写真は日銀本店で2024年1月撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[19日 ロイター] – 日銀は19日、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.50%程度で維持することを全員一致で決定した。声明文では、トランプ米政権の関税政策と各国の対抗措置が海外の経済・物価に及ぼす影響などをリスク要因に挙げ、日本の経済・物価を巡る不確実性は「引き続き高い」と指摘した。

◎半年に1回の利上げペース崩す状況でない

<農林中金総合研究所 理事研究員 南武志氏>

1月の利上げ後に、市場では早期利上げの思惑が出ていたが、連続利上げするような状況には全くない。2025年春闘の賃上げ機運は強いが、それが消費の回復につながっているというデータはまだ見られず、むしろ低調。消費がしっかりしてこないと、追加利上げには動きづらい。

コメの価格なども下がっておらず、少なくとも今年の前半までは実質賃金がプラスに定着するのは難しいのではないか。したがって、半年に1回の利上げペースを大きく崩すような状況ではなく、次の利上げは6月、7月、9月あたりだろうと予想する。

人手不足による賃上げというのは供給サイドの要因であり、それだけで利上げしていくということにはならない。やはり需要が強くなり、需給が逼迫して物価が上がり、賃金も上がるという姿を日銀は求めている。利上げは経済にブレーキをかけることでもあり、もう少し待つ余裕はあるのではないか。

米国経済については、昨年11月のトランプ氏の大統領選勝利以降、不確実性が高い状況は変わっていない。米国景気についても楽観論と悲観論の間で揺れ動いている。重要なのは引き続き国内の消費や需給改善を背景とした物価の動向だ。

◎利上げは最速でも7月、米景気減速懸念で

<野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英氏>

1月の利上げ以降、日銀の追加利上げが前倒しされるとの観測が一時広まったが、米国景気の減速懸念と金融市場の不安定化で、追加利上げが検討しにくい状況になってしまった。日本経済も、足元はコメ・野菜価格高騰による悪い物価上昇で消費が下押しされており、利上げが可能な状況でなくなっている。

きょうの会合の政策声明文にも次の会合に向けた政策上のメッセージは見当たらず、日銀としても追加利上げなど次の政策について現在決まっていないのではないか。

今後もやはり、米国の景気動向が最も重要とみている。トランプ政権による関税引き上げ、連邦政府の歳出削減、移民抑制はいずれも米景気の下振れ要因だ。

そうした中で、米景気の下振れが一時的なものと確認できれば、最速で日銀は参院選終了後の7月で追加利上げが可能ではないか。もっとも、個人的には利上げのメインシナリオは9月の実施と予想している。

◎予想通り、植田総裁の米景気への認識に注目

<SBI新生銀行 シニアエコノミスト 森翔太郎氏>

金融政策の現状維持は予想通り。声明文も、基調判断は前回とおおむね変わっていなかった。植田和男総裁が記者会見で、ここ最近の強い経済・物価の動きや、米国の関税政策を巡る不確実性にどのような認識を示すのか注目される。

経済・物価のデータは強いが、米国の景気減速懸念が強まってきている中、日銀が速いペースで利上げをしていけるか疑問だ。1月の利上げの影響を見極める上でも、5月は難しい。次回の利上げは、5月の次に経済・物価情勢の展望(展望リポート)が公表される7月が可能性として最も高いとみている。

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