写真提供:Costfoto/NurPhoto/共同通信イメージズ ※NO USE CHINA

日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 営業利益率51%、日本で圧倒的な存在感を誇るキーエンスは、過去5年間の平均売上高成長率も15%と時価総額上位の企業の中でもトップクラス。なぜキーエンスはこれほど高い収益力と成長力をあわせ持つことができるのか? また弱点はないのか?

『決算書ナゾトキトレーニング』(PHP研究所)、『決算分析の地図』(ソシム)などの著者で、財務コンサルティングを行う村上茂久氏が、キーエンスの圧倒的な収益力の秘密、競合FAメーカーであるオムロンとの違いを徹底分析。

キーエンスの人件費に隠れている営業の強み

 2025年1月24日時点で、日本の時価総額ランキング6位に位置するファクトリーオートメーションメーカーのキーエンス。営業利益率は50%を超え、その圧倒的な収益性に加え、高年収企業としても知られています。

 なぜキーエンスはこれほどの収益力を誇るのか。前回に続いてその秘密を財務面、営業体制、ビジネスモデルの違いといった視点から分析し、競合FAメーカーのオムロンと比較。キーエンスの強さの本質と、今後の課題についても考察します。

 図表1でキーエンスとオムロンの利益率を比較してみましょう。原価の次に論点となるのが、人件費率です。

図表1

出所:キーエンス2024年3月期有価証券報告書およびオムロン2023年3月期有価証券報告書の単体より筆者作成

(注)ここで比較しているオムロンのP/Lは連結ではなく単体である。その理由は、オムロンが単体で主に工場自動化(FA)を取り扱うインダストリアルオートメーションビジネスを行っているためである。つまり、キーエンスと比較するには、直接FA事業を行っている単体での比較が適切だと考えた。なお、オムロンの2024年3月期は単体で赤字となっており、P/Lの特徴が見えにくいため、ここでは2023年3月期の数字を用いている。

拡大画像表示

 キーエンスの売上高に占める人件費の割合は15.9%である一方、オムロン(単体)の割合は7.9%と約半分です。キーエンスは年収が高いことでも有名ですが、それがP/L(損益計算書)の人件費にも現れているということでしょうか。

 有価証券報告書によれば、キーエンスの平均年間給与は2067万円で、2024年の「年収が高いランキング」では3位に位置しています(※)。この金額は、三井物産1899万円、伊藤忠1753万円といった有名商社を上回っており、三菱商事の2091万円とほぼ同水準です。他方、この水準はオムロンの平均年間給与874万円の2.3倍以上です。

(※)DAIMOND ONLINE 年収が高い会社ランキング2024【全1001社・完全版】1500万円超が13社!

https://diamond.jp/articles/-/352351

WACOCA: People, Life, Style.

Exit mobile version