静岡県熱海市で土石流が発生した現場。7日に現地を調査した名古屋大学の専門家は、堆積した土砂に岩がほとんど含まれないことなどから「“盛り土”が崩れたものではないか」と分析しています。

名古屋大学の河川工学や地盤工学の調査チームが現地へ

 7日、熱海市の土石流の現場に名古屋大学の専門家が調査のため入りました。

  河川工学が専門の田代喬 特任教授と、地盤工学が専門の利藤房男 特任教授をはじめとするチームです。

「熱海とか箱根から伊豆半島にかけて、高低差がついていて沢や川が非常にたくさんある。たくさんの土塊を山地から川へ運んでしまうことは、日本のどこにでも起こる可能性はある」(名古屋大学減災連携研究センター 田代喬 特任教授)

壁にベッタリと残る土石流の“爪痕”

 災害の調査は、被害の状況が色濃く残っている間に行う必要があります。

 地元の土木事務所に案内されたのは、土石流が発生した場所から約1.2km下った場所です。

「見る限り全部土砂ですね」「みんな同じ色をしている」(調査チームの声)

 建物の上の階まで、壁いっぱいにベッタリと泥がついています。

「家の壁にある“泥のライン”が土石流が流れ下った角度を表していると思う」(利藤房男 特任教授)

 その先の建物には、泥が壁にぶつかって飛び散った様子がわかります。土砂はさらに、その約1km先の海まで達しました。

「土石流は流れの勢いに応じて、流せる物質が変わってくる。谷が狭いと、たくさんの水や土砂が流れることになり、非常に速い流速になる。それが少し谷が広がってくると、土石流の勢いが衰える こういった場所に土砂をたくさん堆積させて、いまこれだけ残っているということかなと」(田代喬 特任教授)

岩が含まれない「粘り気の高そうな砂粒」…流れたは“盛り土”か

 静岡県は、土砂の量が10万立法mに及ぶ可能性があるとしています。

 熱海のように火山が広がる地域の山の土砂には、火山灰のほか、溶岩などの岩石も含まれています。

 土砂を見た専門家は違和感を感じていました。

「ほとんど主体となっているのが、粘り気の高そうな細かい砂粒」(田代喬 特任教授)
 
「すごく流動化しやすい土が水と絡まって泥流になっていることがよくわかる。ここの基盤岩ではなく、ほとんど岩がなくて泥流の土砂なので、たぶんおそらくは“盛り土”の崩れたのがメインになって流れてきている感じがする。」(利藤房男 特任教授)

 利藤特任教授は、土石流について「大きな岩石をほとんど含んでおらず、盛り土の可能性が高い」と推測しています。

 名古屋大学減災連携研究センターでは、今後、他の研究者とも連携して、土石流のメカニズムの成分の解明を進めるとしています。

(7月8日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)

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