イーロン・マスク氏率いる米政府の新組織「政府効率化省(DOGE)」は、トランプ大統領とマスク氏が、連邦政府のスリム化を目的として考案し、大統領令により正規の連邦機関として設置が決まった。
しかしDOGEの行動は、大統領令が定める正式な権限をはるかに超えている。そのイニシアチブと大胆な介入について知っておくべきことを紹介する。
政府効率化省とは何か
そう呼んでいるが、実は省ではない。省の設立と廃止は、議会の承認によってのみ可能だ。柴犬がモチーフの暗号資産(仮想通貨)ドージ(doge)コインから派生した「バクロニム(まず短縮形ありきの組織名)」として、DOGEを頭文字とする「Department of Government Efficiency(政府効率化省)」という名称をマスク氏が考え出した。
一般市民が政府サービスにアクセスする際に用いるオンラインツール改善を任務とする米国デジタルサービス(USDS)が、米国DOGEサービス(USDS)に改称されると大統領令は規定した。
正式な権限は何か
トランプ氏の当初の構想では、DOGEは「政府の官僚機構の解体、行き過ぎた規制と無駄な支出の削減、連邦機関の再編」に「道筋をつける」任務を負うはずだった。
だがDOGE設置の大統領令では、「政府の効率と生産性を最大化する連邦機関のテクノロジー、ソフトウエアの最新化」により「大統領のDOGEアジェンダ」を実行することに目的が絞られ、はるかに権限の範囲が狭くなった。
権限が狭まったのはなぜか
権限の範囲を絞った背景には、マスク氏が倫理審査を逃れることを助ける意図があったかもしれない。DOGEのコスト削減任務は、マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務める宇宙開発企業スペースXと米政府との数十億ドルの契約にも影響すると考えられる。
DOGEは制約を受けているか
マスク氏は「テクノロジーの最新化」とほとんど似ても似つかないやり方で、連邦機関に影響力を行使する手段にDOGEを利用し始めた。ベッセント財務長官は1月31日、DOGEのチームスタッフに対し、米政府全体の資金フローを管理する決済システムへのアクセスを認め、DOGEが特定の政府契約先への支払いを停止する予定だとマスク氏は明らかにした。トランプ氏はその後、ホワイトハウスの承認がなければ、この権限をマスク氏は持たないと記者団に語った。
2月1日には、米国際開発局(USAID)の建物にDOGEチームスタッフのメンバーが入り、高度な機密情報へのアクセスを要求した。 USAIDが抵抗すると、ホワイトハウスは上級職員らを休職扱いとした。マスク氏はX(旧ツイッター)への投稿で、USAIDを死すべき「犯罪組織」と批判した。
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Elon Musk
Photographer: Kenny Holston/The New York Times/Bloomberg
原題:How Elon Musk’s DOGE Is Reshaping the US Government: QuickTake(抜粋)
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