14日の米国株市場でS&P500種株価指数は小幅高。日中は方向感に乏しい展開となった。重要なインフレ指標である米消費者物価指数(CPI)の発表を翌日に控え、慎重姿勢が広がった。CPIは、この先数カ月の米政策金利を見通す上で手掛かりを与える可能性がある。

株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数5842.916.690.11%ダウ工業株30種平均42518.28221.160.52%ナスダック総合指数19044.39-43.71-0.23%

  S&P500種は上げ下げを繰り返した後、最終的にプラス圏で引けた。大半の構成銘柄が上昇したものの、大型ハイテク銘柄が売られ、全体を押し下げた。大型ハイテク7強「マグニフィセント・セブン」に連動するブルームバーグの指数は1%下げた。

  オプショントレーダーは15日のS&P500種の動きについて、CPI発表日としては2023年3月以降で最も変動が大きくなるとみている。シティグループのスチュアート・カイザー氏は、オプション取引のデータに基づき、同指数が上下に1%変動すると予想した。

  SWBCのクリス・ブリガティ氏は「CPIに注目が集まっている。ここ最近では最も重要なインフレ指標かもしれない。市場はFOMCの政策にばかり気を取られるようになっており、CPIはそのセンチメントをあおるだろう」と指摘。「インフレの数字が強く出れば、2025年に利下げはなく、利上げさえあり得るとの見方が強まる一方、データが弱かった場合はFOMCの政策を巡る市場の懸念が落ち着く可能性がある」と述べた。

   昨年12月の米生産者物価指数(PPI)は、前月比の伸びが予想外に鈍化した。食品コストの低下やサービス価格の横ばい推移が寄与した。ただ、米金融当局が注目する個人消費支出(PCE)価格指数に反映される項目の一部は強弱まちまちとなった。

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Ups and Downs Before CPI

 

 

  2024年末の米国の基調インフレは、堅調な労働市場と安定した経済を背景に、若干の鈍化にとどまったもようだ。追加利下げに対する連邦準備制度の慎重な姿勢を後押しすることになる。

関連記事:米CPI、FRB利下げ休止観測を後押しか-堅調な雇用統計後 (1)

  22Vリサーチが実施した調査によると、投資家の47%がCPIに対する反応は「リスクオフ」になると予想。29%は「リスクオン」、24%は「反応薄・まちまち」とみている。このほか回答者の53%は、金融環境は引き締まりが必要だと考えていることが示された。

  22Vのデニス・デブシェール氏は「米経済が『マクロバランス(コアPCEの2%への接近と完全雇用)』を達成するには、金利の上昇ないし金融環境の一定の引き締まりが必要になると思われる」と述べた。

Source: 22V Research

 

Source: 22V Research

米国債

  米国債市場では30年債利回りが上昇し、再び5%台を付けた。12月のPPIの伸びはエコノミスト予想を下回ったものの、インフレに対する懸念は根強く続いている。

国債直近値前営業日比(bp)変化率米30年債利回り4.97%1.20.24%米10年債利回り4.79%1.00.22%米2年債利回り4.36%-1.5-0.33%  米東部時間16時46分

  PPIを受けて30年債相場は一時上昇したものの、堅調を維持できず下げに転じた。同年債の利回りは10日にも5%台を付けていた。10年債利回りはこの日、一時4.81%に上昇。30年債、10年債の利回り共に、2023年11月以来の高水準となる。

  根強いインフレを受けてFOMCが利下げを見送るとの懸念から、米国債利回りはここ数週間に上昇傾向にある。

  ソシエテ・ジェネラルの米金利戦略責任者、スバドラ・ラジャッパ氏は、PPIを受けて「短期債はひと息ついた」とした上で、期間が長めの債券はインフレリスクと予想される米国債の供給増を反映していると分析した。

  昨年9月の時点では、ウォール街のエコノミストの間では25年中に100bpの追加利下げが実施されると広く予想されていた。だが米経済に関して強いデータが続いたほか、トランプ次期大統領の貿易政策でインフレが加速するとの見方から、追加利下げの予想は後退。12月の雇用統計発表後には利下げ予想はさらに弱まった。

  BMOグローバル・アセット・マネジメントの債券責任者、アール・デービス氏は「市場は政策の確実性が強まるのを待っている」と分析。「利回りが魅力的な水準にあることは間違いない」としつつも、今月28、29日に開かれる次回FOMC会合までリスクの水準は高い」と述べた。

為替

  外国為替市場ではブルームバーグのドル指数が6営業日ぶりに低下。トランプ次期米大統領の経済チームが関税を月ごとに徐々に引き上げる案を検討しているとの報道に反応した。PPI発表後には下げを拡大した。

為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1314.06-5.81-0.44%ドル/円¥157.97¥0.490.31%ユーロ/ドル$1.0307$0.00620.61%  米東部時間16時46分

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの米州担当最高投資責任者(CIO)、ソリタ・マルチェリ氏は14日の顧客リポートで、「2025年は上期と下期で極めて異なる展開になるだろう。上期はドルの強さが示されるが、下期にはその一部もしくは全てが反転する」と予想。「現在ドルは極めて過大評価された領域にあって数十年ぶりの高値付近で推移しており、投資家のポジショニングが高水準にとどまっている状況はこのシナリオを裏付けている」と記した。

  円は主要通貨に対してアンダーパフォーム。対ドルでは4営業日ぶりに下げ、一時0.5%安の158円20銭を付けた。

ドル・円の動き

 

 

  日本銀行の氷見野良三副総裁は、来週の金融政策決定会合で追加利上げを行うかどうかを議論する考えを示した。また日銀の経済・物価見通しが実現していけば、今後も政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく方針も改めて示した。

関連記事:氷見野日銀副総裁、来週の会合で「利上げ議論」-市場観測を後押し

  クリストファー・ケアー・ロンホルト氏らダンスケ銀行のストラテジストは、戦術的ポジションとして対円でのドル・ショートを推奨(期間は1-3カ月)。「ネガティブキャリーは逆風だが、予想される目先の値動きはこの短期のポジションを正当化すると考えられる。一方でこのポジションの期間を延長するかどうかについては、今後のマクロ経済の展開次第だろう」と指摘した。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は反落。イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦交渉がまとまるとの観測が弱材料となった。

  米CBSは、イスラエルとハマスが停戦と人質解放で原則合意したと報じた。ロシアとイランからの供給減少リスクを背景に原油相場はこのところ大きく上昇しており、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は前日には5カ月ぶりの高値を付けていた。

  テクニカル指標面でも、原油先物のRSI(相対力指数)が年初以降の大半で買われ過ぎの領域に達していた。

Oil Pulls Back from Oversold Territory | WTI slipped from a five-month high after rising by 2.9% on Monday

 

 

  TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は、アルゴリズム取引を手掛ける商品投資顧問業者(CTA)が買い疲れの兆候を示していると指摘。

  「先物価格に関する当社のシミュレーションは、CTAがWTI原油を買い増すシナリオはないことを既に示唆している。相場をこの先支えるには、バイデン米大統領が政権最後に導入した対ロシア制裁に伴い、供給リスクプレミアムが継続的に上昇することが必要になろう」と述べた。

関連記事:バイデン政権、ロシア石油業界に包括的な新制裁-取引の締め付け強化

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物2月限は、前日比1.32ドル(1.7%)安い1バレル=77.50ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は1.3%下落して79.92ドルで引けた。

  金相場は反発。米PPIを受けて物価上昇圧力への懸念が和らいだことが買いにつながった。利子の付かない金は通常、借り入れコストが上昇すると投資妙味が低下する。

Gold Steady as Traders Await Key US Data | US inflation data is due this week

 

 

  金スポット価格はニューヨーク時間午後3時18分現在、前日比10.72ドル(0.4%)高い1オンス=2673.88ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は3.70ドル(0.1%)高の2682.30ドルで引けた。

原題:Wall Street Traders Hold Their Breath Before CPI: Markets Wrap(抜粋)

US 30-Year Yield Back Above 5% Despite Benign Inflation Readings

Dollar Extends Losses After Tariff Report, Soft PPI: Inside G-10

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