米国とカナダの国境にある田舎道の終点には、レゴのようなコンクリートブロック6つが並んでいる。雪が吹き付ける中、警察車両がそこに急停止した。写真は米ニューヨーク州とカナダ・ケベック州の間の国境。12月6日撮影(2024年 ロイター/Carlos Osorio)
[サン・ジョルジュ・ド・クラレンスビル(カナダ) 16日 ロイター] – 米国とカナダの国境にある田舎道の終点には、レゴのようなコンクリートブロック6つが並んでいる。雪が吹き付ける中、警察車両がそこに急停止した。
これらのブロックは、移民を乗せた車両が国境を越えて米国に入るのを阻止するため、バイデン米政権との共同事業で昨年8月に設置された。それでも、徒歩で国境を越える移民を止めることはできない。
カナダ王立騎馬警察(RCMP)のダニエル・デュボア巡査部長は「(ブロックを)飛び越えることは可能だ」と語った。
カナダ警察は、ここ4年間で国境にカメラとセンサーを増設した。トランプ次期米大統領が、カナダとメキシコが移民や麻薬の米国流入を減らさなければ25%の関税を課すと警告したことを受け、カナダ政府は南に向かう違法越境者をターゲットに警官と装備を増強すると約束した。
しかし、カナダ当局は移民を阻止するためにできることは限られていることも認識している。
ケベック州のRCMP広報担当者、シャルル・ポワリエ氏は「たとえ全ての地域を警備したとしても、止めることはできない」と語った。
ロイターが入手したデータによると、カナダ当局は10月までの1年間にカナダに入ろうとした移民約1000人を送還した。一方、カナダから米国に入ろうとして米入国管理当局と国境警備当局に逮捕された人は2万3000人を超えた。米国行きの移民の逮捕数は前年から倍増したが、それでも米国とメキシコの国境付近で同期間に逮捕された150万人に比べれば、まだごく少数だ。
カナダと米国の国境移動の大半は南向きだが、今後それが変わる可能性もある。
A line chart shows the number of people intercepted by Canadian police between ports of entry and turned back to the U.S., from March, 2023 through November, 2024.
A line chart showing the number of migrants intercepted by U.S. CBP near the Canada-U.S. border.
<世界最長の地上国境の警備>
ロイターは国境をパトロールするRCMPに同行し、一般市民からの情報、米国当局からの通報、監視カメラがとらえた不審な動き、潜在的な越境者を運んでいる疑いのあるドライバーなどを取材した。
森、野原、湖にまたがる約6400キロメートルという世界最長の陸上国境を警備するのは、途方もない仕事だ。そして警察は、たとえ米国に移住する意志を持っているとしても、合法的にカナダに滞在している移民を逮捕できない、とポワリエ氏は指摘した。
難民支援団体は、国境管理の厳格化が移民を抑止するどころか、より大きな危険にさらすと主張している。2023年の規則変更で各国が難民申請者を送還できるようになってから、ケベック州とニューヨーク州の国境付近では9人の死亡が確認された。
支援団体アクション・レフュジーズのカルロス・ロハス・サラザール事務局長は、「ここでやっていることは、人々を危険にさらしていることに過ぎない」と語った。
移民問題の専門家の中には、米国への移民希望者のカナダ入国を防ぐことがより効果的な戦略と指摘する者もいる。
警察はロイターに対し、空港から直接入国した人々を国境で阻止したと語ったが、その数については明らかにしなかった。カナダは今年、ビザ発給拒否件数を増やし、ビザ保有者であっても入国を拒否することを始めた。
カナダのミラー移民相は難民支援団体との非公式会合で「一定の条件でビザを取得し、カナダに来て難民申請した人たちが、その後大量に米国に移住できるようにするのは適切ではない」と語った。
<市民の監視>
ニューヨーク州シャンプレインに住むテリー・ロウ氏は、自宅がカナダ国境から1.6キロの場所にある。野生動物観察のために敷地内に6台のモーションセンサー付きカメラを設置したが、観察することになったのは不法移民だった。
彼は携帯電話で、バックパックを背負って雪の上を小走りで移動する人物の8秒間の動画を再生した。過去3年間でこのような動画を40回以上撮影したという。
「移民らは、寝室の窓から約20メートルのところにやって来る」「ショートカットして庭を横切っていくのを見たこともある」とロウ氏は話す。
同氏は移民について、定期的に米国国境警備隊に報告しているという。南方向への越境者は多いが、北に向かう場合はそれほど頻繁ではないという。
ロウ氏によると、米当局は以前、逮捕者に報奨金を出していたという。カナダ警察は移民の往来について住民に通報を呼びかけている。
ただ、先月まではカナダから米国への越境が大半だったが、状況は変わりつつあるとロウ氏は言う。トランプ氏は来年1月の就任後に大量強制送還を実施すると警告しているが、カナダ当局は米国から逃れてくる移民流入に備えている。「移民が急増しても対応できるように、国境に警官を配置し直した」と、RCMPのポワリエ氏は述べた。
ロウ氏の見方によると、その急増はすでに始まっているようにもみえる。最近発見した越境者5人のうち、4人は北上者だったという。
「流れは逆転しており、今後ますます増えるだろう」。
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